第一章 極秘プロジェクト始動

3.実行!『TRK』プロジェクト!
 このプロジェクトには欠かせない行事がひとつだけあった。それは、立山砂防見学会の申し込み資格の中に立山砂防博物館の見学が必須な事である。その証として申込用紙に入場券の半券を添付しなければならない。と言うことは、前もって一度、立山に行かなければならない、と言うことなのである。応募資格を得るために、私は1999年4月某日、夜行バスでこっそり富山に向った。

Tちゃん「何故こっそりなんですか!?」
S藤「ところで、皆は立山砂防博物館の半券は入手したんか?」
団長「もちろん!多分…」
Tち「へい!」
H君「…は〜い…」
・・・「おう!」
ゲスト「一応!」
・・・「イエ〜ス」

 なんや、返事が多いような気がするが、全員がふたつ返事で返す怪しさは敢えて気にしないでおく。返事でも分かるように今回は軽探団の団員4名とゲスト1名が加わり合計5名でのツアーとなったのであった。

S藤「返事が多いやんか!」
Tち「楽しそうなんで、つい声色つかってました!」

 早速、応募、応募!!

(中略)

 1999年7月7日、我々は青空の下、立山は千寿ヶ原で緑色のDLが奏でるアイドリング音に胸躍らせていた。

H君「なんか、中略の中身が非常識なくらい長くないですか?いつもならトロッコと全く関係ない事をダラダラと羅列するくせに。」
S藤「そうかいな?俺には何ら不自然な点はないけどな…」
H君「いや、やっぱりオカシイ!だって、出発から団長の顔も見えないし、そのゲスト1名とやらもいないじゃないですか!怪しい!」
S藤「まあまあ、落ち着いて…。ほら、あれを見なさい!立山砂防軌道のDLですよ。」
H君「いつもの関西弁じゃなくなってる!実に怪しい!」

 我々の目の前には出発スタンバイ完了のトロッコが停まっていたが、間もなく汽笛を鳴らして走り出してしまった。シートが被されて何を積んでいるのか分からないが資材は満載だ。たくさんの無蓋貨車を連結している。どうやらこのまま本線へ入るのではなく、これから仕分け作業をして列車を仕立てるらしい。

立山砂防軌道 立山砂防軌道

 しばらくするとDLのエンジン音が高まった。先ほどの資材列車の仕立てが終わり、急勾配を登り始めたようだ。一旦停止し一瞬静寂が訪れたが、再びエンジン音が高まり無蓋車2両を従えた資材列車は山の上へ消えて行った。そろそろ我々も乗車準備に取り掛かるとするか…。スイッチバックを折り返す為に短く編成された資材列車を見送った。

立山砂防軌道

(中略)

H「また中略ですか!やっぱり怪しい!!」
S「あまりごちゃごちゃ書くと行数稼ぎとか言うやんか!それで中略やないかい!」


4.ついに乗車!
 今回のツアーに疑惑の念を抱くH君をよそに、我々は乗り場に向かった。さあ、いよいよ乗り込み景色のいい谷側になる進行方向右側に腰をおろした。

S「流石に乗りにくいな…」

 ゆっくり引っ張られるように車体が動き出した。発車するとすぐ右下に立山砂防軌道の線路が見える。

立山砂防軌道

H「これ、砂防軌道じゃなくてケーブルカーじゃないですか!」
S「その通り!今回の抽選はハズレじゃ!砂防は次回に持ち越し!関電だけ当選じゃ。これから立山黒部アルペンルート経由、みくりが池温泉泊の後、黒部ダムに向かうぞ!」
H「騙しましたね!砂防軌道には乗らないじゃないですか!」
S「何を言うか!誰が砂防軌道に乗ると言った?この章のタイトル見てみい!『関西電力専用軌道』としか書いてへんやろ!まだまだじゃのう!甘い甘い。軽探団の団員たる者、常に警戒心を持たなあアカンで!」
H「…… 」

 ガックシと肩を踵まで落とし、テンションが下降するH君とは裏腹に我々を乗せたケーブルカーはグングンと急坂を上昇して行く。あっという間に砂防軌道のスイッチバックは見えなくなってしまった。美女平までの所要時間は約7分だ。美女平からバスに乗り換えて室堂へ。ここの所要時間は50分。車道に沿って遊歩道だか登山道だか良く分からない道が見え隠れしている。歩いて登る人もいるのであろうか?勾配はケーブルカーほどではないにしろ上り坂が続く。室堂へ近づくにつれて景色も高地らしくなり植生も変化しているようだ。室堂付近には雪も残っていた。
 室堂ターミナルからみくりが池温泉へは雄大な自然の中の徒歩になる。意外とアップダウンのある歩道を雷鳥を探しながら歩いて辿り着いたのは、雄大な風景の中に溶け込んだ山の温泉小屋であった。部屋で一休みして外に出ると少し肌寒むかった。陽が西に傾いている。何故か皆、黙って太陽が落ちて行くのを見ているだけだった。弱い光線が皆の顔を照らしていた。いつもの野営と違い気持ちに余裕がある。ただ静かでゆったりとした時間が流れていた。
 余談だが、ここみくりが池温泉は標高2410m、日本一高所にある温泉である。Tちゃんと私は温泉マニアでもある。砂防軌道には乗れなくてもここまで来ただけでも嬉しい事であった。H君も多分許してくれるであろう。今夜はゆっくり温泉に浸かり明日に備えよう。東京を発つ団長と明朝、黒部ダムで合流だ。
 


みくりが池温泉で休む軽探団3人組。明日はいよいよ!


[1999.07.07]

  

 

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