■第二章 乗り物マニア垂涎の地下探検!

1.団長合流!アンダーグランドツアー開始!
 いよいよ今日は関西電力専用線を含む見学ツアーの催行日だ。みくりが池温泉で硫黄臭くなった体で集合場所の黒部ダムへ向かって宿を出た。トロリーバス、ロープウェイ、ケーブルカーと乗り物好きには堪らないコースである。しかも景色が素晴らしい!特に大観峰から乗ったロープウェイの車窓に広がるスケールの大きな景色は感動モノであった。ただ、どれも乗車時間が短く、若干の物足りなさを感じてしまう。季節運行だけに料金が高めなのも仕方ないことか…。
 今までに見た事もない雄大な自然の余韻に浸りながら黒部ダムまで降りてきた。集合時間までまだ少しあるのでブラブラしていると、向うから疲れた顔のオッサンが現れ一気に余韻がふっ飛んだ。

団長「悪かったな!昨日は時間一杯まで仕事で倒れそうなんじゃ!」
S藤「わっかりました、じゃあ、ゆっくり寝とって下さい。乗り換えの時には起こしますわ!」
団長「それじゃ、意味ないじゃんかよ!」
S藤「分かりました!それじゃ乗り換えの時に起こしませんわ。」
団長「そうじゃねえだろ!!」

 集合は10:45にトロリーバス黒部ダム駅駅長室前だ。ここからいよいよスペシャルコースになるが、ここからもバス、インクライン、トロッコ、竪坑エレベーターなど乗り物マニア垂涎の内容である。私は立山アルペンルートは初めての経験であったので、大町〜黒部ダム間は未乗の形で欅平へ向かうことになった。
 ツアー客らしき人たちが集まってきた。ツアーの内容からして、トロッコマニアや鉄道マニアが多いのでは?と思っていたが、一見してマニアと分かるような人は意外にもいなかった。年代は我々よりも上の方が多いが、ほとんどが普通の旅行好きな感じの人達だ。我々も一般客を装いツアーに紛れ込んだ。(元々一般客じゃ!)事前に郵送されてきた当選通知関連書類を取り出し受付をしワッペンをつける。何となくツアーが始まった。ツアーにあたっての注意事項やコース説明と共に黄色いヘルメットが配られた。ヘルメットは欅平の解散まで着用しなければならない。頭の大きいTちゃんはギリギリ被れたようだが、中のサイズ調整ようベルトは外していたに違いない。
 ツアーの最初はバスであった。しかも普通の貸切バスである。普段は通ることのできない関西電力専用トンネルを進むが10.2km、約40分の行程は、はっきり言ってあまり面白くない。トロッコ目当ての我々には特にであるが多分一般の人もそう感じるのではないだろうか?このツアーを企画する側もそれを悟ってか途中、トンネル掘削工事の際にズリ捨てに使用された作業坑に寄り、黒部の深い谷を見ながら外の空気に触れるようになっている。ガイドさんが黒部の峡谷の説明をしてくれる。一息入れ再びバスに乗り込んだ。
 作廊谷でバスを降りると次はインクラインだ。これにはちょっと興味をそそられる。傾斜角34度、斜距離815m(標高差456m)のインクラインは所要時間20分のゆっくりした速度で下る。(パンフのウケウリです)元々は発電機器輸送用で作られている為、積載能力は25tもあるので速度優先での設計ではないからだ。生い立ちは貨物用とは言え客室がついている。(大型貨物を運ぶ時は外されるらしいです)
 さあ、この下はいよいよ発電所のフロアになる。目的のトロッコ列車が待っているぞ!!

2.ツアーの本命!関電トロッコ乗車!
 ほとんどがトンネル内で空が見えないため、自分たちのいる場所の標高を感じないがパンフレットによると、今いる場所の標高は869mらしい。地下通路を進んでいるような感覚で発電所内を歩く。

S藤「ホンマ、こう、地下ばかりやと標高どころか時間の感覚ものうなるわ!」
Tち「オッサンなんか時差ボケのような顔になってますわ!」
団長「仕方ねえだろ、昨日まで忙しかっただから。これに来るのに無理やり仕事詰め込んで終わらせて来たんじゃ!」

 インクラインから降りて歩き始めた、足元の緑色に塗られたコンクリートの床にはトロッコのレールが埋め込まれている。レールは発電施設まで延びていた。しかし、トロッコを目前にして昼食の時間になった。一時休憩だ。ついでにツアー参加の記念撮影をしてくれる。

 
 (カメラを持って撮影している人の足元付近にもトロッコ風の幅広線路がある。)

 昼食は全く飾り気のない場所である。簡単なテーブルが並んでいるだけの部屋であった。一息いれて、ツアーのヤマ場、いよいよ関西電力専用軌道に乗車だ!
 地下通路を少し広げただけの空間に複線のレールが敷かれている。片側だけだが、一応プラットホームがあり、BLを先頭に1両の有蓋貨車と4両の客車が連結された列車が停まっている。お待ちかね、どうやらこれが我々ツアー一行が乗車する列車のようだ。

 
 (トロッコのトンネルは、ほぼ全線がカマボコ型であった。)

 ツアー係りの人が現れて、ツアー客を次々に客車の中へ詰め込んでいく。そして、私とTちゃんの荷物を見て、「大き過ぎるなあ」と言いながら困った顔をした。確かに他の人たちの手荷物は小さい。参加の注意書きにも『手荷物はなるべく少なくして下さい。(リュック1個程度)』とある。乗車する客車小さく、荷物を置くスペースがないのが理由であるのは軽探団団員なら察するところだが、私とTちゃんは、このツアーの後、祖母谷温泉と阿曽原温泉に連泊する計画である。祖母谷温泉だけなら欅平から散歩感覚で行けるが、流石に阿曽原温泉行きはそれなりの装備が必要である。また、この様なワンウェイの旅行だとコインロッカーに預けるというわけにもいかない。結局、二人のリュックは客車には載せられないと言われ、列車の前の方へ連れて行かれた。どうするのか?と思っていたら、何と有蓋貨車の扉が開けられ、ここに入れろと言うことだった。

S藤「何や、脅かして。荷物が載せられんという理由で黒部ダムへ強制送還されるか思ったわ。」
Tち「まあ、それは無いでしょう。一応、客なんだし…」
S藤「それにしても、皆、荷物小さいなあ…。ツアーの後、すぐ帰るんやろうか?」
Tち「ちょっと、勿体無いですよね。せっかくの黒部峡谷なのに…。」

 その通りである。私とTちゃんは今回のツアーに参加するために、前後の宿泊は全て富山県内で3泊の計画である。(みくりが池温泉、祖母谷温泉、阿曽原温泉)ま、阿曽原温泉はちょっとオマケでマニア向けとしても、鐘釣、黒薙、宇奈月あたりに宿泊し、ツアー集合前とで、前後の1泊づつは想定される範囲であろう。と、いうことは、ゆっくりと富山の自然や温泉、乗り物を楽しむためには、それなりの荷物になるように思うのである。女性なら尚更だ。なので、少し大き目に荷物も温かく受け入れて下さい!(最近では更に注意事項が付け加えられ荷物制限が厳しくなったらしい)
 何とか強制送還だけは免れた我々は客車に乗り込んだ。
 ここの客車は黒部峡谷鉄道の一般車とは違い、かの有名な高熱隧道を通るため耐熱構造になっていて、窓もしっかり付いている。しかし、下部軌道と結ぶエレベーターに載せるため、車長は短い。客車にツアー客と添乗員(各車両1名)が乗り込むと満パン状態で発車である。
 ゆっくりであるが意外と軽快に走り出す。機関車もBLなので静かだし、ジョイント音も軽やかだ。本格的な旅客用ではないので、足回りは良くないハズだが、乗り心地は悪くない。路盤がしっかり作られているのであろうか。景色は全く望めない暗闇の中を時々カーブで進路を変えながら進んで行く。しばらくして列車がカーブしたかと思ったら、急に回りが明るくなり停車した。ここは唯一、軌道が黒部川を渡る仙人谷の橋上だった。ここでは少し休憩時間があり車外に出られるようになっている。橋の前後はすぐにトンネルだ。
 この軌道は当初、仙人ダム工事の目的で敷設された。橋のすぐ「くろよん」側にある側線が、その工事の時の終点のようである。仙人ダム近くまで延びているらしい。また、この橋は仙人谷乗降場になっていて、近くの関西電力人見寮の人員輸送の目的も果たす。

 

 仙人谷の欅平のトンネルから先がいよいよ有名な高熱隧道だ。乗車した人数の入念な人員確認の後、列車はゆっくりと動き出した。すぐに高熱隧道に差し掛かる。スピードを緩めて係りの人が客車のドアを開けた。黄白色の粗い岩肌が見える。硫黄成分そのままの素掘りの岩盤だ。トンネルの途中で人見寮へ続く側線の分岐がある。
 トロッコ列車はトンネルの中をひたすら走る。途中に阿曽原などの駅(と、言っても乗降スペースがある程度だが…)があるハズだが、何処が駅なのか全く分からなかった。時々、蛍光灯の光で浮かび上がるトンネル壁面を見送りながら欅平へ向けて進む。車軸の転がる音とジョイント音は軽快だ。やがて列車は速度を緩めて停止した。

 

 このツアーでのトロッコ部分は距離6.5km、所要32分の内容であるが、あっと言う間のトロッコであったと言う印象だ。列車を降りたツアー一行は竪坑エレベーターに向けて歩く。
 エレベーターの順番を待つ間、展望台のような所で待機する。普段は立入る事のできない特別展望台だ。標高の高さが実感できた。

  

 

 

 貨車に積まれた我々のリュックは竪坑の下で渡された。貨車だけが竪坑で降ろされたのだった。リュックを受取り、その場で少し待っていると黒部峡谷の車両?が入線してきた。欅平駅までの500mはこれで移動する。

 

 

 準備までが異常に長かった、このツアーもいよいよ終焉を迎える。最後は何となく流れ解散的ムードであった。
 黒部峡谷鉄道の列車を1本見送った。ツアー客の大部分がそのまま下山したようである。我々4人は欅平駅を出て今夜の宿、祖母谷温泉へ向かった。疲労困憊の団長は祖母谷までの緩い上り坂もキツイ感じであった。

  

 

 

 何か、被写体が普通じゃないですね。黒部峡谷鉄道の中でもマニアックな内容である。

[1999.07.08]


  


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