■島原の酒造場を探れ!


 諫早から快調に飛ばした国道251号線を折れて細い路地に入った。島鉄の踏切を渡り、ゆっくり車を進める。既にナビの音声案内も終了した。目指す加藤酒造場はもうすぐだ。軌道の存在は間違いないと思うが、今回は現場を見るまで不安である。ホームページに「当分の間、酒蔵見学中止」と出ていたからだ。遥々やって来たのはいいが、果たして軌道を見ることは出来るのだろうか?
 目印の煉瓦煙突が見えてきた。酒蔵の塀伝いに進んだが中が見えないまま角を右に曲がると駐車場があった。煉瓦煙突には「アサヒノボル」の文字が現れる。酒蔵の敷地を削って造られた駐車場部の塀だけ隙間があり中が覗けるようになっていて、超低速で車を走らせながら、その隙間から中を覗くとチラっと一筋の軌道が見えた。(よしっ!)とりあえず車を駐車場に入れる。
 軌道の写真だけなら塀の隙間から撮影できそうだが、折角ここまで来たら中へ入りたい。門は開いていたが誰も居ないので向かいにある直売店に行く。店の扉を開けると旨そうな酒が並んでいた。奥から女将さんらしき方が出て来たので、見学交渉の足がかりに5合瓶の「特別純米酒」を買い、酒蔵の写真撮影のお願いをしてみると快くOKを頂いた。(買わなくてもOKでしょう)
 袋に入れた酒の瓶をぶら提げながら撮影をした。軌道の一番奥のガラクタの下に台車が1台あったが、見るからに暫く動いていないようである。短い軌道なので、10分もあれば撮影終了である。車が通る部分(踏切と言うべきか?)だけコンクリートで固められているが、残りの部分は地面の土の上に鉄製枕木という構造だ。軌道の末端に車止めはない。軌間は508mmで、軌道敷設の目的は酒造りに使う米の運搬用である。軌道終点の建物が洗米場らしい。
 ここ加藤酒造場の施設の一部は長崎県登録資産に指定されている程の文化的価値のあるものだ。酒蔵の完成は1917年。トロッコの使用は恐らく酒蔵の完成以降であろうと思う。また、「アサヒノボル」の文字のある煉瓦煙突の高さは17mとのことだ。
 買った「特別純米酒」は旨そうなので、すぐに呑んでしまいたい気分だが、ちょっと我慢して正月用にとっておこうか…。何たって青空に浮かぶ「アサヒノボル」が縁起良さそうじゃないですか!

《データ》
■加藤酒造場 [廃線・保存]

◇長崎県島原市有明町大三東戊字西川1216-1◇島鉄湯江 歩15
◇残存区間:駐車場〜洗米場前◇距離:約0.02km◇軌間:508mm◇動力:人力◇敷設日:不明◇廃止日:不明
 

《車輌データ》
◇01:加藤酒造場 FC(木製台車/508mm)

[探索日:2009.11.29]




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