■長崎のトロッコアイランドを探れ!

 池島の存在を知ったのはトロッコマニアのバイブル「知られざるナローたち」である。そこに展開されている鉱山軌道は真に夢のトロッコアイランドであった。しかし長崎市内から近く加藤が走っていた高島に比べると長崎から遠くバテロコの池島はいくらマニアとは言え足が重かったのではないだろうか?今では共に廃鉱になってしまったが軌道が完全撤去された高島とは違い、現在でも生きた炭鉱を垣間見ることができる池島は見学者も受け入れていて逆に足を運ぶマニアが多いと聞く。そんな池島を訪れたのはまだ体験コースのなかった2004年7月8日のことであった。(しかも廃鉱後!)存在を知ってから約20年経っている。(腰、重すぎ!)
 前日から長崎入りして、この日は朝イチで高島に渡り保存車輌を見て軌道が完全に無くなっているのを確認し長崎市内へ戻った。その後は市内観光をするつもりでいたが、雨が激しく降り出して街歩きが面倒になって急遽駅近くでレンタカーを借りて池島へ向かった。池島も天気は期待できなかったが車に乗っていれば歩いているよりマシである。事前に入手していた池島への船便の時刻表を確認しながら北へ走る。現地では昼食がとれるか確証がなかったので途中で弁当を購入しフェリー乗り場を目指す。約1時間半でフェリー乗り場に着いた。雨は小降りになったが風は強い。
 レンタカーと共に乗船する。港付近にも線路があるので徒歩の探索も可能だが、折角の機会なので島内一周を考えた。何となく古ぼけた船が入港してきた。どうやらこれが池島へ渡る船らしい。乗り込むとすぐに弁当を広げて昼食にすると船は池島へ向けて動き出した。港を出ると右前方から風を受け始めた。すると船は船首が左回転するようにローリングし始める。すぐに船酔いする私は嫌な予感を感じ約30分の航海のうち28分(本人推定)は横になって目を閉じていたが、船底から波の衝撃が強く伝わってくる。そろそろ限界か?と感じたその時、間もなく着岸のアナウンス。辛うじて事無きを得たのであった。それでも上陸後も若干気分が悪かったが、とりあえず車を走らせた。
 港の近くに線路があった。あまり稼動していない雰囲気ではあったが、まだ生きている軌道であることは感じる。庫(くら)の中のBLを見ていたら少しずつ気分が晴れてきた。
 池島の軌道は港近くからボタ廃棄場へ続く下部の軌道と、山の上の斜坑を中心とした上部の軌道がある。まずは下部の軌道を港〜貯炭場〜埋立てのボタ廃棄場へと見て回ったが最初のBLがあったところ以外は使われていないようで、埋立てのボタ廃棄場付近は線路も撤去されていた。
 港から島の集落を抜けて坂道を登る。左手は炭鉱施設が続くが中は見えない。坂を登り切る少し手前に軌道跡らしきものが確認できた。斜坑から延びるもうひとつのボタ廃棄場へ向かう軌道も撤去されていた。既に採炭を終えた炭鉱にボタ捨ては不要なのだろうか。炭鉱施設の塀が途切れた部分から僅かに軌道が見える。こちらもまだ現役を感じさせるものだった。更に車を走らせる。島の西側から下り坂になるとインクラインかベルトコンベアーか?の下の方へ傾斜して直進するコンクリート建造物があり、そこを過ぎると元の港の近くに降りた。港の一部は廃棄物置場になっていてナベトロの鍋の部分や鉱車の箱の部分が沢山あったが不思議と足回りはなかった。
 一周して上陸したフェリー乗り場に戻ったが帰りの便までまだ時間があったので少し早回りで島をもう一周しモレのないよう再確認した。再び港に戻ると帰りの船が接近してきた。来る時の船とは違うやや新しい船だったが海の荒れ具合は変わりないので気合いを入れて乗船する。離岸すると防波堤に線路のような筋が…。あっもうひとつのボタ廃棄場見てないや…。(漏れ漏れやん!)
 池島には約2時間の滞在であった。帰りの船は少し早く、揺れも明らかに少なかった。
 その後、池島は見学者を受け入れるようになった。チャンスがあれば是非再訪したいものである。

《データ》
■池島炭鉱 [現存]

◇長崎県長崎市池島町1411-1(旧西彼杵郡外海町大字神浦池島郷256)◇長崎 バ120(大瀬戸)→船30(池島港)→歩5 
◇区間:旧池島鉱業所内◇距離:総延長9km◇動力:蓄電池◇軌間:610mm
 
◇鰹シ島炭鉱池島鉱業所→池島炭鉱(1998.07)→三井松島リソーシス樺キ崎炭鉱技術研修センター◇2001.11.29閉山
池島炭鉱体験コースの案内
◇参考:知られざるナローたちp82-85(1980.03)・RM010p50-54・RM018BEST・トロッコp46-49,149,226・知られざる鉄道・朝日新聞1999.07.02・全国鉱山鉄道p14(1990.01),資4・RM312p140-141(2009.05.23)

[探索日:2004.07.08]



inserted by FC2 system