■赤間の元菓子問屋を探れ!

 JR鹿児島本線の教育大前というあまり歴史感のない駅名の改札口を出ると目の前は唐津街道という歴史のある道が通っている。江戸時代に整備されたこの街道沿いには当時の古い建物が点在していた。地図を見ると古い街道沿いに良く見られる奥行きの長い建物が多い。緩やかな坂を下り交差点の信号を過ぎて右手「桝屋」の文字がある建物がある。その文字の横には「菓子・アイスクリーム問屋」と書かれているが、既に商いはやめてしまっている。ここにトロッコの軌道が残されていると言うので探索してみた。
 建物を正面から見ると右手にシャッターがあり、中央にタイルの貼られた部屋、左手にアルミ製の扉が並んでいる。タイルの部分はアイスクリームに関連するスペースだろうか。アルミ扉の所に呼鈴があった。来意を告げると奥から女将さんらしき方が現れ、タイル部屋の裏側を通って軌道跡の所に案内された。すると後はご自由にどうぞと言った感じで部屋に戻ってしまった。
 軌道の横に一人取り残された。では早速探索を開始だ。軌道はシャッターの所から始まっていた。レールは鉄板を立てたもので細い。理想の形状ではないが軌道全体の雰囲気は悪くない。シャッターの中は通路になっていて中央に軌道が敷かれている。奥を覗き込むと軌道は若干左右にヨレながらもほぼ直線で一番奥まで続いているようだったが末端が良く見えない。軌道に沿って奥へ進んでみると軌道の両側に物を置くスペースがあって、かつては商品の倉庫だった事が窺えるが、今では生活用品の雑然と置かれている。軌道途中に台車があった。前後のどちら側からでも押せるよう手摺が付いている。通行の邪魔になるのか軌道から外されて横に置いてある。車輪はレールの細さに合わせて戸車タイプ。2軸ではなく4輪だ。軌道はかなり奥まで続いていた。途中は全て倉庫だったが3つの区画に仕切られている。商いを営んでいた頃は商品毎に区分けされていたのかも知れない。一番奥の部分で軌道は少し左に曲がっていた。末端は建物の一番奥の硝子扉の手前の小さな車止めで終わっている。
 一通り見終わって住居部分の方へ向かって声を掛けた。先ほどの女将さんらしき方が現れた。丁重にお礼を言って店を出た。シャッターの表側から見ると地面にレールの片方だけがハミ出していた。その先のコンクリート上にオーバーランの跡があったのはご愛嬌。
 軌道の長さは約60メートルとのこと。軌間は実測値で450mmであった。


《データ》
■桝屋 [廃線]

◇福岡県宗像市赤間4-10-7◇教育大前 歩5
◇区間:店舗〜倉庫◇距離:約0.06km◇軌間:450mm(実測値)◇動力:人力◇敷設日:不明◇廃止日:2006年頃
 
《車輛データ》
◇01:桝屋 FC(鋼製台車 450mm)

[探索日:2015.01.21]



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