■宮田町の加藤を探れ!

 かつて鉄道ファン誌に連載された岩堀春夫氏の「専用線の機関車」はコアなファンは涙モノだったに違いない。そのシリーズの第14回(283・1984.11号)は何と「放置ロコ雑感」!(これはシビレまっせ。)そこに登場する機関車たちは「車輛」と言うよりはもはや「ガラクタ」。しかし、それはもう衝撃的で印象的なモノばかりであった。この加藤はその中で紹介されていたモノだ。
 ファン誌の発表から6年後、ようやく筑豊地方を巡る機会を得た。金田から直方を経て宮田行きのバスの乗った。ファン誌に記載の通り「本城」で下車。そしてバス停から周囲を見回す。レポートにある「田中商店」「中古車屋」が手掛かりだ。何となく、あそこかなあ〜…と思った方向へ歩くと廃材に埋もれる2台の加藤を発見した。そこは中古車屋ではなく解体屋のようだった。会社名も「北九州メタルクリーン」となっている。
 奥の方で作業していたオッチャンに声を掛けて探索を開始した。ファン誌の載った写真は探索の9年前の1981年のものだが、比較するとやはり痛みが進んでいる。それでも加藤らしさは残っていた。大きさは5tに満たない感じだ。車輪が埋もれているので軌間は計測不可能だった。銘板なども確認できないため手掛かりがない状況だ。その中で唯一手がかりらしいモノと言えばキャブの扉にある山を模った「ヘ」型の下のカタカナの「ホ」。一体これは何を意味するのか?用途は土木系か炭鉱系か?2台の機関車はほぼ同型に見えるが、レポートにも機関車に関する詳細な情報はない。
 もう少し手掛かりが欲しいところであったが、特にこれといった発見は出来ずに探索を終え、再び宮田行きのバスに乗り込んだ。
 2008年の2月に再訪してみた。すると本城バス停付近は一変していた。道は広く綺麗になり、沿道は郊外型の店が立ち並んでいた。あの解体工場があった事など全く想像も出来ないくらいだった。当然、工場と共に2台の加藤も消えてしまっていたのである。


《データ》
■北九州メタルクリーン(旧田中商店) [放置]

◇福岡県鞍手郡宮田町(現宮若市)本城◇直方 バ10(本城)→歩すぐ
 
《車輛データ》
◇01:DL(加藤/B型)
◇02:DL(加藤/B型)

[探索日:1990.10.03]



◇参考:TF283p84,p86(1975.08・1981.05)


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