■松山港の製材所を探れ!


 日曜日の港町の朝は意外と静かだ。駅の改札を抜けると真っ先に海沿いの道に出て目的地を目指した。製材所のすぐ手前まで来た。次の角を曲がれば軌道が現れるハズだ。そう信じてここまで来たのだった。
 当初、この情報は「松山港の製材所」だけであった。1998年時点での情報で軌道があったのは分かっていたが、廃線なのか、現役なのか?それは分からないままであった。その後、いくつかの調査を経て確証は無かったが高い精度で製材所名と所在地を割り出したのである。(流石、情報家!)せめて軌道の痕跡だけでも残っていて欲しい…、そう願いながら角を曲がった。
 …、あった!すぐに軌道が確認できた。製材所西側の護岸に大きなクレーンがあり、その土台近くから軌道が製材所の敷地へ向かって延びていた。が、ゆっくり近付くと廃線のように見える。まあ、完全スカよりはいいか…。軌道上に材木が置かれていて車輌はない。やはり廃線だったか…。
 しかし、製材所の中を覗くとこの軌道と直角に交差するもうひとつの軌道が見える。交差部はターンテーブル跡の円がくっきりと残っているが、クレーンからの軌道はそこで一旦途絶えて、交差部の向うで復活している。
 中の軌道には木製の平台車があり材木が載せられている。僅かな区間だが、これは現役の手押し軌道だ!
 製材所の周囲をひとまわりしてみた。護岸の角を右に曲がった北側には使われなくなった古いクレーンがあり道路には軌道が残っている。これは恐らく製材所内部から続く軌道の延長であろうが、製材所の入口部分は撤去されてしまっていた。つまり、元々はこの製材所には荷揚げするクレーンが2基あって、木材を運搬する軌道も本来、十字型に2線あったということだ。これらに軌道は既に木材運搬としての役目は終えているが、製材所内での材木の移動では使用されていたのである。
 ここは木造の古い製材所である。木の香りを肌で感じる温もりのある建物であった。

《データ》
■瀬村製材所 [現存・廃線]

◇愛媛県松山市住吉1-7-11◇三津 歩5
◇区間:製材所内◇距離:0.03km◇軌間:610mm◇動力:人力◇敷設日:不明◇一部廃止日:不明
◇2箇所ある製材所〜積込クレーンは廃線
 
《車輌データ》
◆01:瀬村製材所 FC(木製平台車 610mm)

[調査日:2010.12.19]




inserted by FC2 system