■阿南の製材所軌道跡を探れ!

 ある日、YouTubeでトロッコを検索していると、何処だか分からない製材所のトロッコ軌道跡の動画を発見した。何となく日本的な風景であったが、他に韓国の動画もあって映像が日本で撮影されたかどうかさえハッキリしないのであった。唯一の手掛かりは上流部で林業が盛んな地域を流れる河川の河口近くであるらしいと言うものだった。で、ここで活躍するのがグーグルやヤフーの航空写真であるが、対象の範囲があまりにも広すぎて…。
 それでも時間がある時に目ぼしい河川の河口部付近の製材所を丹念に探した。その作業にどれくらいの時間を費やしたかは分からない。しかしようやくその努力が報われる日が来たのであった。
 徳島県阿南市、桑野川(すぐ隣に那賀川が流れる)の河口部に怪しい製材所を発見。動画と比較しても軌道の形状と地形が符合している。軌道跡はここなのか…。しかし航空写真では軌道までは確認できない…。ダメ元でストリートビューを起動した。すると…、あった!何と軌道を発見できたのである!
 軌道発見から1年以上経ってようやく探索へ出た。徳島でレンタカーを借りて一路阿南市を目指す。那賀川の橋を渡り最初の路地を左折。細い道を進んだ先に製材所が見えて来た。果たして軌道は残っているのか…。製材所近くの道路脇のスペースに車を停めて徒歩で向かう。すると軌道の末端が見えた!
 製材所は休みで稼働していなかったが、軌道自体は通行可能な土手の上に敷設されていて、立入禁止区域になっていなかったので軌道上を歩く事ができた。
 土手は製材所を囲むようにあって、製材所周りの3分の1くらいは土手である。その土手の上にある軌道は一体どの様な役割をしていたのだろうか?
 製材所の南側は船溜まりのような水路になっていた。また北側は桑野川が流れていて土手を挟んだ川側にも製材所関連の建物が建っている。やはり軌道はこれらの水運と関連しているだろうか?
 現在では何も設備が残っていないが水運を利用して木材が製材所へ運び込まれていたのか?それとも逆に製材所から運び出されていたのか?意外と水運は関係なく製材所内だけの移動手段に使われていたのか?
 軌道が大きくカーブしているので距離感がなくなるが、残存している軌道距離は100メートル以上ありそうだ。途中に分岐はなく1本線である。軌道の近くにクレーンやホイストなどがないので積込みや積下ろしの光景が想像出来ない。現役時代の様子が全く推定できない不思議な軌道跡であった。
 軌間は実測値で605〜620mmである。レールはコンクリートに埋もれているが細いレールであるのは間違いない。太さから推測して動力車は無かったような感じである。
 また、製材所の北東側の土手の上には短い別の軌道跡?があった。前述の軌道は土手に並行しているが、こちらは90度向きが違い製材所から土手を超えて行く向きになっている。ただ残存しているのは土手の上だけだ。土手を超えると桑野川沿いの建物が建っている。製材所と河岸を結んでいたのかも知れないが土手の勾配があってそのまま軌道が敷設されていたとは思えなかった。軌道自体はハッキリ残っているのに現役時代が想像できない不思議な軌道跡であった。

 ※最近になって軌道があった土手の上のストリートビューが映らなくなりました。

《データ》
■アルボ木材 [廃線]

◇徳島県阿南市原ケ崎町居屋敷71◇阿南 歩45
◇残存区間:製材所外周◇残存距離:0.12km◇軌間:610mm◇動力:不明◇敷設日:不明◇廃止日:不明
 

[探索日:2016.12.11]




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