■宇部の炭鉱跡を探れ!

 かつて宇部市の海岸沿いに点在した炭鉱群を総称して宇部炭田と呼んでいた。長生炭鉱はその宇部炭田の中のひとつであった。
 宇部線床波駅から常盤駅方向へ約1kmのところに、車が1台通れるくらいの広さの「新生浦踏切」がある。そこから海の方へ数百メートル。民家が点在する中に怪しげな集会所があり、その隣から炭鉱住宅風の建物が残る。このあたり一帯が長生炭鉱の跡地だ。ほとんどが炭鉱関連施設の名残らしい。建物がないところは荒涼とした雑草地が広がる。
 その中の一軒、「T工業」として利用されている建物が旧炭鉱事務所だったらしく、建物のすぐ裏手にアーチ状の遺構がある。現在は物置として利用されている。鉄扉の中はすぐにコンクリートの壁で、足元には僅か数メートルの軌道が残存している。軌間を計測してみると455mmという何とも中途半端な幅であった。JTBキャンブックスの全国鉱山鉄道には、この長生炭鉱の記載はなく、近くでは山陽町の梶鉱業所に430mmという軌間が存在する。しかし実測値と25mm差は誤差が大き過ぎるようだ。
 この鉱山軌道については特に資料がなく、全くもって不明であるが、唯一残存するこの痕跡だけは記録しておきたいものだ。
 尚、長生炭鉱は1914年に開坑した海底炭鉱であったが、1942年水没事故により閉山。その海底坑道には今でも183名の犠牲者が残されたままという現実を忘れてはならない鉱山である。

《データ》
■長生炭鉱跡 [廃線]

◇山口県宇部市西岐波1465◇床波 歩20◇現在私有地内
◇残存区間:旧鉱業所内◇残存距離:0.003km◇軌間:455mm◇動力:不明◇敷設日:不明◇1942.02閉山
 

[探索日:2009.01.18]



inserted by FC2 system