■下津井の工事軌道を探れ!


 私にとっての「軽便鉄道」とは尾小屋でも井笠でもなく「下津井」だった。ナローの面白さに気付いた時には軽便鉄道はもう近鉄と黒部と下津井しかなく、当時の鉄道誌や旅行誌などでも、これら3路線は残された「軽便」として良く取り上げられていたが、その中で一番「軽便らしさ」を醸し出していたのが下津井だったのである。その下津井には1982年から1988年の間に3回ほど通った。その2回目の訪問の時である。
 小雨の中、下津井駅構内で保存車両などを撮影した後、下津井駅から出てすぐのところにある大きなカーブ(当時、有数の撮影ポイント)で走行写真を撮影しようと思い、下津井駅から5分くらい歩いた道端から遥か向うにカーブする線路にカメラを向けた時であった。何やら下津井の線路の向うに工事現場らしきものが見える。遠くてはっきり分からないがオレンジ色のクレーンと黄色い機関車風の物と…、何となく線路みたいな…。いやっ間違いない工事用トロッコだ!
 下津井の撮影をそこそこに現場に急行した。一般道から一段下がったところに現場があった。やはりトロッコの線路もある。私は工事用トロッコを見るのはこれが初めてだった。誰かいないかと思い、事務所らしき建物にに近づいて行くと、真新しいバテロコと数両の作業用貨車があった。セメント材料のホッパーや資材積込用ホイストなどもあり、2線あるヤードから単線の軌道が工事中のトンネルに延びていた。坑口は扉が閉ざされていて中は見えない。どうやら何かのトンネル工事のようだが、現場に掲げられた看板から本四連絡線(瀬戸大橋)関連の工事であることが分かった。訪問当日は工事は休みだったようで、現場には誰もいなかった。
 単線で坑口から出て来た軌道は複線に分岐して資材積込用ホイストに延び、片方の線路からスイッチバックしてセメントホッパーに至る。坑内は全く分からないが坑外部は100mにも満たない。
 車両はバテロコが1台あるが、車体には車番らしき文字「2」と記載されてので、もう1台あるのかも知れない。予備バッテリーが5個置いてある。貨車は長めの台車とセメント運搬車らしき2両が線路上にあるほか、ボギーの長物車が1両線路から外されて資材置場の片隅に置かれていて全部で4両確認できる。
 1990年12月31日、とうとう下津井が廃止になってしまい、その後は下津井を訪れていない。翌年の1988年12月に友人と下電に乗った時には車窓から確認できたが、現在この軌道がどうなっているかは不明である。

《データ》
■大成・大日本・浅沼JV 本四連系線第二工区工事 [現存?] ※古いデータです。現状不明。

◇岡山県倉敷市下津井◇児島 バス(下津井)→歩10
◇距離:坑外部約0.07km◇軌間:762mm◇動力:蓄電池◇敷設日:不明
 

[探索日:1987.03.29]



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