■柵原の竪坑を探れ!


 同和鉱業片上鉄道のディーゼルカーに揺られて終点の柵原に着いた。ホームの横に貨物用の側線があって、そのすぐ向うが柵原鉱山であった。小高い山の斜面に鉱山施設が広がっていて、上部と下部はインクラインで結ばれていた。所々にトロッコ用のレールらしきものが敷設されているのが見えるが、その線路上に車輌は見当たらなかった。折り返しにたっぷり時間をとっていたので周囲を散策してみた。
 鉱山の周囲を周ってみようと近くのトンネルを抜けて山の反対側に出てみた。山の斜面には鉱山施設はなく、道路に沿って坑口らしき穴が数箇所あいていたが、トロッコ軌道は存在しなかった。すぐ横に吉井川が流れている。ふとそちらに目をやると川の対岸の遥か向うの集落の中に竪坑が見えた!イマイチ距離感が分からないが、時計を見るとまだ1時間以上あった。トロッコがあるのか確証はないが、駅周辺で時間を潰すよりも面白そうだったので行けるところまで行ってみることにした。目標はハッキリしている。歩き出して30分経ったら戻ろう。
 まずは川を渡らなければならない。少し上流に橋が見えるのでそちらに向かって歩き出した。時間が気になるので無意識のうちに早足になる。集落の中の道を右に左に曲がりながら竪坑を目指した。すると30分にならないうちに竪坑の前に辿り着いた。
 竪坑を中心に鉱業所の敷地内の多方面に軌道が延びていたが、既に使われていないようだった。一部を除き軌道の大部分が埋められていてレールの頭しか地表に出ていない。車輌に関しては超小型のBLが一台あったが他に動力車はなく、作業用の貨車がほとんどである。レールの上に乗っているのは少なく、ほとんどが地面に置いてある状態だ。資材運搬用の台車、箱型のものや火薬台車、平台車などが全部で20両近くあった。鉱車は3両だけ、人車は見当たらない。ここは鉱石を運び出したり、人夫が出入りする坑口ではなく、資材や工具、機材などを搬入する坑口のようだ。素早く写真を撮る。敷地はあまり広くなく撮り終わるまで10分もかからなかった。
 帰りの列車まで時間があったが、駅までの帰路もやや早足で歩く。短い滞在時間であったが心地よい満足感があった。あれから既に20年以上の歳月が過ぎ、片上鉄道も廃止されてしまった。この場所は今どうなっているのだろう?

《データ》
■同和鉱業柵原鉱業所工務課 [廃線?]

◇岡山県久米郡柵原町藤原◇和気 バス
◇区間:鉱業所内◇動力:蓄電池◇軌間:508mm◇敷設日:不明◇廃止日:不明
 

[探索日:1987.03.27]



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