■紀伊長島の廃製材所を探れ!


 「林鉄の軌跡」なる書籍に紀勢線紀伊長島付近の名倉港から延びる林用軌道が簡単に紹介されている。この本によれば、この林用軌道の詳細は不明らしいが、軌道は民間のもので台車を貸出す組合形式の運行形態をとっていたらしいと記されている。開設時期も不明であるが昭和30年頃に廃止になった模様である。動力は人力または蓄力で機関車は無かったらしい。そしてこの実態が良く分からない林用軌道から枝分かれした側線の名残が残っているという飛び切りのネタを入手!早速、調査だ!とは言っても自由時間と調査費用がママならない。しかし18キップが使えるこの時期にムーンライト往復という強攻策で何とか捻出しての出発だ。
 紀勢線沿線には紀勢線開通50周年のポスターが目に付く。それによれば紀伊長島駅は昭和5年(1930年)の開業とある。林用軌道の起点は名倉港にあり、紀伊長島駅付近には貯木場などが無いことから、陸路の紀勢本線とは関係なく敷設されたのであろう。
 今回の目的地が名前も不明の廃製材所ということで事前に明確な所在地が分からなかったが、世の中便利になったもので林用軌道の沿線で大まかな当たりをつけた後はグーグルアースの映像で製材所らしい場所を割り出した。その場所は赤羽川河口のすぐ東側だった。果たして正解は如何に!
 紀伊長島では2時間弱の時間をとった。目星をつけた場所が正解なら駅から徒歩で10分程度の距離だ。時間が十分あるので駅から直接向かわずに一旦赤羽川に行き、林用軌道のルートを探してみた。しかし何処が線路跡なのか全く分からない。赤羽川の土手かその下の道か…?
 河口に向かって歩く。河口近くで小さな川に架かった橋を渡ると墓地があった。その向うに怪しげな建物が見える。工場の様な大きな木造の建造物だ。一見してビンゴだ!あれに間違いないゾ!ゆっくり接近してみた。敷地の周囲には塀や柵などが全くなく「立入禁止」の掲示もない。私有地とは知りながら、「軽探団心得その6」を心の中で呟く。(不法侵入です!ゴメンなさい!)すると建物の方から物音がした。ちょっとビビッたが誰かいれば了解を頂こうと思い、建物の中を覗いてみると中で子供が遊んでいた。こりゃ絶好の遊び場だ。そして建物の中の中央部に一筋の軌道があった。距離は約20m。台車が2台あり、線路のところにあるが脱線した状態だ。車輪のフランジが欠けている。軌間を計測したら762mmだった。林用軌道が何処を通っていたのか分からないので、この軌道がどう接続していたのか皆目見当もつかない。
 古い建物であるが中には新しい材木が置かれている。意外にもまだ使用しているようだ。一通り写真を撮り製材所を後にした。海岸沿いの防波堤側に出ると子供用の自転車が3台あった。製材所と裏の林が遊び場らしい。子供達は楽しそうに遊んでいたがトロッコには全く興味はないようだった。

《データ》
■紀伊長島の製材所跡 [廃線・保存]

◇三重県東牟婁郡紀北町紀伊長島区呼子◇紀伊長島 歩10
◇残存区間:製材所内◇残存距離:約0.02km◇軌間:762mm◇動力:人力(推定)◇敷設日:不明◇廃止日:不明
◇01:FC(木製平台車 762mm)
◇02:FC(木製平台車 762mm)
 

[調査日:2009.08.31]




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