■越戸の粘土作業場を探れ!


 1987年の正月、大学の友人達とドライブで愛知、岐阜方面へ出かけた。東田子の浦、富士川、興津、菊川の入場券が残っているので立ち寄ったのであろう。高速は使わずに夜の東海道を走り豊田市内に入ったのは夜明け前だった。そして明るくなって訪れたのが越戸鉱山だった。
 場所は名鉄の越戸駅のすぐ近く。工場は正月休みで人影はなく、こっそりと探索したのだった。鉱山と名乗っているが探索当時は粘土を板状にしたものを棚に並べて乾燥させている作業場のようで採掘をしている様子はなかった。以前は粘土鉱山だったのかも知れない。
 軌道は名鉄の越戸駅横の積換場から始まって作業場に向かって延びていた。途中でいくつか分岐して木製の干し棚の間をへろへろと続いている。作業場から積換場へは緩やかな登り勾配になっている為、巻索で引き上げられるようになっていたが、作業場内は人力で移動させるようだった。
 軌道に沿って奥へ進むと木製のトロがいくつもある。そしてそのひとつのトロに鏡餅と橙が飾られていた。何故このトロに飾られていたのか?その経緯は判らないが唯一正月休みだという証だった。
 全体的には少し窪地で畑か田んぼのような場所に軌道が敷かれている雰囲気だった。機関車は無かったがここの手押しトロッコは変化に富んでいて楽しかった。数十分の探索で作業場をあとにしたのだった。
 結局、探索はこの時の一度だけになってしまった。その後、工場は廃止された。軌道の一部が残っていたが、それも撤去されたようだ。最新のストリートビューで確認すると名鉄は高架化され、軌道があった頃の面影は全く無くなってしまている。

《データ》
■愛知殖産越戸鉱山 [現存]

◇愛知県豊田市越戸町下小田◇越戸 歩すぐ
 
◇参考:RM006p62-63・BESTトロッコp59

[探索日:1987.01.04]




inserted by FC2 system