■縄地の金山跡を探れ!


 昔、鉄道ファン誌に気まぐれ連載(毎月ではなく飛び飛びだったように思うのだが…)された「こっそり ひっそり めだたずに」はトロッコマニアの間では衝撃的であったに違いない!(本誌推定)私自身は当時、まだトロッコには目覚めておらず、鉄道誌も頻繁にチェックしていなかった時代だったので、その記事を読んだ記憶もないのであるが、後に地元の古本屋に山積みされていた古いファン誌を片っ端から立読みしていて発見したのである。
 その気まぐれ連載の中で伊豆にある縄地金山が紹介されていた。海に突き出た鉱石積出桟橋と大きな木造ホッパーが印象的であった。また、同じくして古本屋で発見した岩波写真文庫にも積出桟橋の写真が掲載されていて大変興味を持った軌道であった。そこで1987年の初夏、縄地を訪れてみた。
 下田から海岸に沿って走る河津方面行きのバスに乗った。河津町に入って少し行くと入江の奥に縄地の集落がある。金山関連の施設は集落の手前にある。
 ファン誌に載っていた坑口から国道を跨いでホッパーへ続く線路は無くなっていた。またホッパーがあったと思われる場所にはズリが堆積していて往時を偲ばせる。国道から細い道を降りて入江の中へ向かい、ホッパー跡と積出桟橋への坑口を探ってみるが石垣程度が残っているだけで、これといった収穫はなかった。が…、何気なく海岸へ向けて足を進めると何と!足元に埋もれかけたレールが現れた!!これは縄地金山の軌道跡だろうか?軌道はポイントで分岐していて、一方は神社の横の小屋へ続いていて、もう一方は砂浜へ向かっている。
 小屋の中を覗いてみると、台車があり、その上にボートが乗っていた。どうやらボートを海岸まで搬送する軌道らしい。軌間は508mm。ファン誌によれば金山軌道は2フィートとあるが…。金山軌道とは無関係なのか?軌道位置もホッパー跡と思われる所からは若干海寄りにズレているようだ。
 帰宅後、縄地金山の記事と現地の軌道を重ね合わせてみたが、金山の軌道の名残なのか?全く別個の軌道なのか?それとも廃止後の資材流用なのか判明できなかった。ボートを乗せた台車については形状や軸距から鉱車とは別モノのように思われた。
 2006年5月5日、縄地を再訪した。発見したボート運搬軌道は既にレールは撤去されて、ボート小屋だけが残っていた。砂浜は侵食防止の為か捨石で埋められてしまい、軌道は消えている。金山跡もボート運搬軌道も痕跡は完全に消えてしまっていたのであった。
 尚、国道上の坑口には僅かに軌道が残っているという。

《データ》
■土肥鉱業縄地鉱業所跡(ボート運搬軌道) [鉱山軌道]
◇静岡県賀茂郡河津町縄地◇河津 バス(縄地)→歩10
◇動力:人力◇軌間:610mm?・508mm◇開業:不明◇廃止:不明◇撤去:不明(1987.05.08〜2006.05.05)
 


◇参考:鉄道ファン134(1972.06号)
    旅857
    全国鉱山鉄道資料3


[調査日:1987.05.08]



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