■磐田見附宿の老舗酒店を探れ!


 静岡新聞に小学生がトロッコ体験をした記事を発見!早速調査し場所を特定した。それは東海道の見付宿にあった。
 見付宿のある旧東海道は東海道線磐田駅から2km弱離れている。理由は様々だが、この様に駅と宿場町が離れているケースは意外と多い。駅からチャリを転がして10分強、目指す丸中大橋商店があった。かつての東海道は区画整理で拡幅工事を行い、道幅が広くなった分、古い建物は建替えられ思っていたよりも古い建物が少なかった。
 丸中大橋商店は明治期創業の老舗の酒店である…、と言うことは当然古いトロッコと思われがちであるが、今回の探索で意外な事実を知ることとなった。
 店の前の駐車場の端に自転車を停めると、通路を塞ぐ扉の隙間から中にあるトロッコが確認できたので、内心ニヤけながら店に入った。入ってすぐ、振るとゼリー状に固まるという面白い酒が目に入ったので手に取ってレジに向かう。そして代金を払いながらトロッコの写真撮影をお願いした。すると女将さんだと思っていたレジの女性は普通の店員さんで、奥で家事をしていた女将さんに伺いに行った。すぐにOKをいただきレジ横の扉からトロッコのある場所へ通された。早速撮影にとりかかる。トロッコ周りが雑然としていたので、片付けましょうか?と言われたが敢えてそのままの状態で撮影した。ただトロッコは好きな所へ動かしてOKとのことだったので明るい場所へ移動させた。下を覗き込むとトロッコに使われている車輪は普通のトロッコ用ではなかった。恐らく滑車用ではないかと思うが、レールに当たる部分が凹形になっているのがやや残念である。(どうやら脱線防止らしい)
 軌道は店舗横の通路からまっすぐ奥へ延び、途中で左へ90度カーブして蔵の先まで続いていた。街中トロッコでこんなに曲がっている軌道は珍しい。全長は45メートルとのこと。
 撮影をしているとご主人が戻って来られた。お礼を告げるとトロッコや見付宿のことなど色々と教えて下さった。すると意外な事実が分かった。古いと思われた軌道は実は平成生まれだったのである!(何と!!)ご主人によれば、この店には元々トロッコがあって昔から子供の遊び道具になっていたが、冒頭の拡幅工事で店が建替えとなり取り壊しと同時に軌道は撤去された。その際、隣りの土地を購入し広がったスペースを通路としたが、その時、昔のトロッコを懐かしむ声があがり、更に荷物運搬にも使えそうだとの意見もあり通路に改めて軌道を敷設したのであった。(素晴らしい!)平成2年のことだという。で、気になる元の軌道はと言うと、現店舗の中央あたりを横切り下り勾配を緩和するためS字カーブを描きながら蔵の前まで達していたという。ここ丸中大橋商店は造り酒屋ではなく近在の酒蔵から酒を集めて製品にしていた酒店で、その酒を作業蔵まで運ぶ目的でトロッコが使用されたとのこと。店舗は建替えられたが当時の蔵は2棟残っている。他にも見付宿には酒や醤油、味噌などの醸造蔵があって8軒でトロッコを使用していたが今ではここだけとのこと。ご主人のお話しを伺っているうちにスッカリ長居してしまった。お礼を言って店を後にして駅まで戻ると…、しまった!ゲージを計測し忘れた!(こりゃ高崎の石材店と同じパターンや!)
 帰宅して写真を整理しているとトロッコの上にペットボトルのお茶の箱が乗っている。軌間は概ね箱3個分だった。(載せておいて正解!)自宅に同じ箱があったので計測すると19cmだった。軌間は約600mmになる。
 尚、訪問する際、磐田駅前の観光案内所にレンタサイクル、少し離れたヤマハのショールームにレンタル電動バイクがあるので利用価値大である。

《データ》
■丸中大橋商店 [現存]

◇静岡県磐田市見付宿町1232-1◇磐田◇9:00-22:00・水曜日定休
◇区間:店舗横〜土蔵◇距離:0.045km◇軌間:約600mm(推定)◇動力:人力◇敷設年:1990
 
《車輌データ》
01:丸中大橋商店 FC(木製2軸平台車 約600mm)


[調査日:2012.01.10]




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