■廃線駅前広場を探れ!

 北恵那鉄道の終点、下付知駅があったすぐ近くに一軒の製材所がある。そして、その製材所から駅前広場があった方向へ一筋のトロッコ軌道が延びているのであった。
 昭和53年(1978年)に廃止された北恵那鉄道の廃線跡のレポートはWEB上でもいくつか見ることが出来るが、下付知構内の木材置場に触れてはいても、この製材所について記述しているものは少ない。
 夏の強い日差しの中、製材所を訪れると中からノコギリの音がしていた。玄関に回って中を覗くとご主人らしき方が熱心に作業中であったが、トロッコの撮影をお願いすると快くOKして下さった。製材所の外側からトロッコ軌道のある裏手に回ると中からご主人がトロッコを押し出してくれた。勢いよく走り出したトロッコは軌道の末端までゴロゴロ走って、レールが浮いて持ち上がった末端のところで止まると、自然に製材所の方へ戻るように動き出した。ご主人が仕事に戻っている間、好きなようにトロッコの位置を変えて写真を撮った。トロッコは良く手入れがされているようで、重量感があるにも関わらず僅かな力で軽く動く。暫くすると再びご主人が出て来て、「ネットか何かで紹介するの?だったら宣伝してね。重たいけど、これ良かったら持ってって」と言って、名刺と檜の切れ端をくれた。「紹介は中津川市の熊沢製材所くらいにしといてね」、そう言ってまた仕事に戻った。
 製材所の建屋の中は檜の香りで満たされている。檜と言えば真っ先に木曽を思い浮かべるが、ここからひと山越えれば長野県木曽である。あの助六も直線距離ならそう遠くない。下付知駅からはかつて森林鉄道が山に延びていたがその痕跡は見られない。森林鉄道で運ばれた木材もこの製材所に運ばれてきたのだろうか?
 軌道の長さは約30メートル、軌間508mmで当然人力である。今でも時々出番はあるようで現役のトロッコだ。強い夏の日差しの静けさの中、付知の街外れに檜を加工するノコギリの音が響く。楽しくゆったりとした時間を過ごし製材所を後にすると、旧駅前のバス停から電車から変わった中津川行きのバスが発車して行った。

《データ》
■丸サ熊沢製材所 [現存]

◇岐阜県中津川市◇中津川 バス
◇区間:製材所敷地内◇距離:約0.03km◇軌間:508mm◇動力:人力◇敷設日:不明
※今回は所在地の詳細は伏せますが調べればすぐに分かりますね

[調査日:2011.08.24]




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