■信濃大町の元肥料店を探れ!

 2010年7月、信濃大町駅からトロッコ軌道跡が残る市野屋商店へ向かう途中、寂れた感じの商店街を歩いた。間口が狭く奥行きが深い建物が多いがトロッコがあるような雰囲気は感じはない。しかし!何気なく覗いたガラス扉の中に一筋の軌道が!まずは本来の目的地である市野屋商店まで行って急いで戻った。
 シャッターが降りている店が多い中、ここはシャッターが上がっていたが、商いは既にやめていて現在は普通の民家と化している。扉の所に呼び鈴はなく扉を開けて声を掛けたが、反応がなく時間も無かったので仕方なく写真だけ撮り撤退であった。
 そして5年後の2015年8月に再訪。軌道跡が残っているのを確認し扉を開ける。声を掛けてみたがやはり反応なし。しかし人の気配はある。思い切って更に大きな声で呼びかけてみると反応があった。よし!
 すると隣の隣の扉から女性が顔を出した。??? 3軒分と思われた建物は繋がっていたのである。出て来られたのは女将さんだった。来意を告げると、どうぞと中に招いてくれた。
 話を伺いながら写真を撮影する。扉から土間へ軌道があるが、それほど長くはないのですぐに撮影が終わるか…、と思いきや、「この裏にも少し残っていますよ。」何い!
 中庭に出て建て増しした部分を回り込んで裏手に行くと更に軌道があり土蔵の前を通って一番奥の倉庫の手前まで続いていた。軌道の総延長は3〜40メートルといったところだろうか。途中の建て増し部分を覗くと20メートルくらいの軌道が残存している。土蔵の前は生活品が置かれていて軌道の半分は見えないがレールはしっかり残っていた。台車が残っているか訊ねてみたが、もう無いとのこと。軌間を計測すると620mmであった。
 ガラス扉の隣の部分は飲食店風だったが、女将さんの話しでは元々は肥料を扱う商店だったそうである。当時の神棚や特約店の看板などを見せて頂くと昔の商売の規模が窺えた。特約店の看板には「西澤岩雄商店」とあるので、この軌道が現役だった頃の店の名前であろう。小さな軌道跡であったが話しが弾んですっかり長居してしまった。最後に深々とお辞儀をして後にした。一見何の変哲もない商店軌道かと思われた鉄路にも深い歴史があったのだった。

《データ》
■旧西澤岩雄商店 [廃線]

◇長野県大町市大町2563◇信濃大町 歩5
◇残存区間:土間・蔵付近◇残存距離:約0.02km◇軌間:620mm◇敷設日:不明◇廃止日:不明
 

参考:ブログ軽探団「夏の松本・大町を探る」(2015.08.29)

[探索日:2015.08.29]




inserted by FC2 system