第四章 目指せ坊主岩!

1.機は熟したか?

S藤「う〜ん、やはりここしかないな。」
Tちゃん「何がですか?」
S「あとは団長が○×△…」
T「何を言ってるのか分かりませんよ!」

 賢明な方ならもうお気付きだと思うが、実は軽探団発足以来、初めて木曽に行ってから二年以上なるというのに、助六に行ったのはいつも二人組で、団長、Tちゃん、私の三人が揃ったことが無かったのであった。しかも、きっかけとなった記事に登場する鯎川線跡導入部の藪漕ぎを後回しにしてきた。やはり今度は三人揃って行こうと思う。

S「そろそろスケジュールを合わそやないか?」
T「だいたい休みが不定休なのは、あんたとオッサンで僕はほぼ決まってますよ。」
S「確かにその通り。で、考えてみたんやけど、ココしかないやろ!」

 私も遅い夏休みでまとまった休暇がとれる。と、言うことで、私とTちゃんの休みが合う9月3日〜5日にオッサンの休みを合わせてもらうという作戦を考えた。しかもTちゃんは仕事の終業時間が尋常でなく早い。2日の午後、早い時間には出発できる。

S「題して…、」
T「作戦名はいいですから早く作戦を決行して下さいよ!どうせロクな名前つけないんだから!」

 日程は9月3日〜5日で決まった。

T「調整がむちゃくちゃ早いじゃないですか!」
S「お前が早くって言うからやないかい!」

 まあ、文章では短く書いたが実はこれが中々決まらなかったのである。結局、私とTは2日夕方の出発で自称「忙しい」と言うオッサンは3日の夜に現地合流となり、5日は早めに帰路につくことになった。実質、三人が全員揃うのは4日の一日間だけだ。
 先発の私とTは3日から王滝村内を回った。一応、鯎川線跡は団長が来てからということになるので、念の為、氷ヶ瀬のゲートだけ事前に確認し、先発隊の任務を果たしておいて他の軌道跡を巡ることにする。向かったのは昨年、雪で途中までしか行けなかった三浦方面だった。
 例によって下黒沢をベースにTちゃんとバイクで滝越方面へ向かう。滝越集落は相変わらずだ。営林署関連の建物が並ぶ集落中心部を抜けて舗装された林道を進む。集落を抜けるとダートになるが路面は比較的フラットなので走りやすい。前回のレポートでも書いたが途中はあまり特徴がないので単調な走りが続く。長いトンネルを抜けた先は一瀬停車場付近のはずだ。山の斜面で作業しているのか?上回りだけの貨車が倉庫代わりに置かれている。以前から一瀬停車場付近に小型貨車があるという情報はあったが、今回は情報の通りである。屋根はトタンで補強されているが車体の原形はしっかり留めている。丸太の台の上に置かれ、車体ごとクレーンで吊るせるようにワイヤーが掛けてある。作業現場の移動に伴いトラックなどで運ばれるようだ。この様な貨車や客車が木曽の山中にはたくさんあるらしく、以前、団長が小俣林道でも発見しているし、模型誌の「トレイン」でも紹介されている。
   移動式物置。車番は不明。

 更に進むと三浦ダムが現れる。ダム上のトンネル入口にゲートがあるが、手で押したら開いた。この先ふたつのトンネルは共に路面に水が溜まっていて走りずらい。微妙な速度で慎重に進み水没トンネルは無事クリアできた。ダム上からは軌道跡が色濃くなる。特に橋の部分は軌道跡の印象が一番残っている。尾根筋と谷筋を大きく迂回しながら三浦方面へ進む。王滝村最奥で岐阜県との県境である鞍掛峠から降りてくる車が意外と多い。ランドクルーザー系RVがほとんどだ。作業用なのか遊び用なのかは微妙であるが、何となく釣り人風ではある。ナンバーは全て岐阜県ナンバーだった。車同士だとすれ違いも難しい道幅が続くが、まるで一方通行のように鞍掛峠から来る車だけで帰りは全くすれ違う車が無かった。
  コンクリート製の橋脚があった。

 土浦線分岐点まで来た。分岐点は明確に分かるが分岐した軌道跡はハッキリせず荒れていて辿ることが出来ない。更に進んで前回折り返したカーブの橋が現れた。やはり軌道跡は曲線の方が美しく見える。
   三浦終点付近。

 下黒沢を出てからゆっくり走って2時間弱。鞍掛峠との分岐点をから右へ折れ、ようやく三浦製品事業所跡と思われる所に着いた。周囲は広くなっていて若干、整地されているが軌道がどの様に敷かれていたのか全く分からない。草むらの中に何やら怪しげな建物が建っているので近づいてみると、タンク車や小型の客車が放置されていた。周囲を探索してみたが藪がひどくて入念な調査が出来なかった。
   草に埋もれる廃車体。

 製品事業所跡から更に奥へバイクを進めてみたが路面の荒れ方がひどく、先へ進むのを諦めて引き返すことにした。この奥まで作業軌道が延びていたはずだが、痕跡は全く無い。鞍掛峠の分岐点まで戻った。やはりTちゃんは峠に行きたいらしい。途中までは一応軌道跡でもあるし、時間もあるので付き合う事にする。
 鞍掛峠へ向かう道は河川敷のような部分を通るため山の斜面が緩やかで土地が広くすぎて軌道跡の部分を特定するのが困難であった。林道ですら全く軌道跡らしさが無いのである。結局、軌道がどの様になっていたのかは分からず仕舞いであった。
 やはり鞍掛峠からはコンスタントに車が降りて来る。何が目的なのかは分からないが運転はかなり慣れているように見受けられる。一応、鞍掛峠も制覇して帰路につくことにした。
  カーブの橋。三浦方面では一番の見せ場かも…?

 帰路の途中、滝越から白川線の軌道跡へ寄り道した。最初に来た時に鉄橋を渡ってみたが、鉄橋から白川林道間の軌道跡は通ったことがなかったからだ。一応、車が通れるようにはなっているが作業用の車でないと厳しい感じの路面だ。しかしバイクなら十分に通行可能だ。途中、製品事業所方面へ分岐する側線跡も確認できる。白川線の軌道跡の道を抜けるとB型客車の所で白川林道と合流した。
   白川線跡。フラットのようで意外と路面は凸凹です。

 いよいよ明日は団長と合流。坊主岩へ向けて助六を目指します!

  


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