第二章 いざ助六へ!

7.真夜中の訪問者…?

 疲れた体に酔いも早くまわる。一層冷え込んだ下黒沢の夜は眠りと共に更けていった。静まり返った闇が窓の外を支配している。聞こえるのは冷たい風のそよぐ音だけだ。そんな中…、

Tちゃん「来ますよ!」
S藤「何がや?」
T「聞こえません?」
S「…ん?バイクやな…?」

 ドドドドド………。

T「来ましたよ。」
S「来たな!」
T「どうしましょう?」
S「寝とこ!」

 明らかにバイクが進入して来た。ヘッドライトが車内を過ぎ去り、少し奥で停まった。バイクから降りてきた男が我々の寝ている車の中を覗きこむ。オッサンに間違いない!

T「やっぱり寝てましょう。」
S「そうしよ!」

団長「起きんかい!!」

 テントを設営し、何やらゴソゴソやっている。火を熾し缶ビールを開ける音がした。団長は一人晩餐の後テントに入った。が、私とTちゃんは睡魔には勝てず、すっかり眠ってしまった。

  

 翌朝、起きて見るとビールの空き缶が積んであった。一人で何本飲んだんだ?遥々、団長がやって来たが、今日は早くも最終日である。朝食の準備と併行して帰り支度だ。野営は設営よりも撤収の方が時間を要する。
 天気はようやく回復傾向のようだ。例によって簡単なおかずにパンとコーヒーで朝食を済ませて、毎度の作戦会議だ。今日は帰路につかねばならないので深入りは出来ない。せっかく来た団長には悪いが時間を考えてアクセスが楽で比較的死角になっている崩沢、瀬戸川あたりを見ることになった。若干時間が余りそうなので滝越付近も少し見て回ろう。(団長には少し消化不良気味か…?)
 車にバイクや野営道具一式を積み込む。まず始めに王滝隧道に先にある湧き水に向かった。Tちゃんが自宅で飲用にするらしい。確かに美味。次に滝越付近と白川線を再確認。水交園の保存車両や白川線の鉄橋と助六タイプのB型客車はまだ残っていた。

 
   画面左側の落ち葉の部分が白川線軌道跡。
 

 滝越から来た道を引き返す。下黒沢から松原へ向かう。氷ヶ瀬の先に崩沢方面へ入る狭い道がある。入口からゆっくり進むと軌道跡らしき築堤が現れた。築堤の途中には小さな鉄橋も残っている。このあたりから崩沢沿いに短い支線が延びていたハズだがその軌道跡の痕跡は発見できなかった。また大鹿方面には軌道跡の痕跡が残ってはいるが整備はされておらず徒歩での進入も困難であった。崩沢から松原までは軌道跡が確認できた。

 

 松原から田島までの一応「サイクリンロード」となっている軌道跡の道は途中に落石があり、「通行止め」の看板が出ていた。元々車では通行不可なので林道を迂回する。田島からは再び軌道跡の道を進む。軌道跡ではないが、瀬戸川線分岐の手前に瀬戸川沿いへ入る道があるので、そこを進入する。やがて左手から合流する道が瀬戸川線跡の道だ。合流から少し上流の地点でゲートがあり車はココまで。見た限りでは林鉄に関するモノは何も無かった。帰りは瀬戸川線の軌道跡を戻り本線跡の林道へ出た。少し時間があるので三岳小学校近くの保存車両を見に行くことにする。三岳村の開田高原方面分岐近くに小学校の小さな案内看板が出ている。車を進めてみると駐車場のようなところがあり、その片隅に車両が並んでいた。一応、「林鉄公園」という立札が立っているが、公園というより駐車場に近い。ここには酒井のDL、木製2軸客車と運材台車1組(2両)が保存されている。

  

 今回の木曽はこれで打止め。三岳村にある団長お気に入りの蕎麦屋で大天ざるを食べて帰路に着こう。
 さて次回は如何に!

T「それにしても、毎度ですけど王滝村を出ると文がアッサリしますね。」
S「しゃあないやん、どうしても気が抜けてしまうんや。まあ、三岳村の蕎麦屋の天ざるの美味さで少し救われるけどね。」

 次回の助六訪問を誓い、木曽路を後にした。

  

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