■越前東郷の造り酒屋を探れ!


 JR越美北線の越前東郷駅改札口を出て、そのまま南へ約200メートル歩くと、中央に水路が流れる趣のある通りに出る。その交差点から左手を見ると毛利酒造の建物があった。
 通りに面した建物は店になっていて酒を購入する事が出来る。扉を開けると女将さんらしき方が出て来た。とりあえず5合瓶くらいの純米酒を探して購入し会計を済ませ、残存しているのかどうかわからないトロッコの取材を切り出す。すると何故トロッコの存在を知っているのか驚きの表情を浮かべ問いかけてきた。知ったのは確か酒蔵見学をした方のSNSに線路の写真が載っていたからである。
 さて、取材が許されるかどうか…。女将さんは「あ〜そうですか〜、どうぞこちらにありますよ〜。」と言って店の裏側へ出る扉を開けてくれた。すると足元にトロッコのレールが現れた。軌道は残っていた!
 軌道は建物の隙間を奥へ向かって延びている。手前のレールの片側は一部アングル材になっているが確かにトロッコの軌道であった。奥まで入ってもOKだったので、ゆっくりと歩いていくと少し広くなった空間に仕込み水の井戸があった。井戸の横の櫓の上には仕込み水を蓄えているのか、大きな樽が乗っていた。軌道は櫓の先から屋根の下を通り、少し右へカーブして仕込場らしき部屋の中へ続く。目測で20メートルくらいの距離だろうか。奥の方はレールの溝が埋められていてトロッコは既に使われていないのが理解できる。台車なども既に無いようだった。508mmかと思いながら軌間を計測すると、んんん、500mmまで届かない。珍しい485mmであった。コンクリートの部分で計測したので誤差は少ないと思う。奥まで3往復くらいして写真を撮り店内へ戻ると、「昔はここで曲がって向こうまでありました」と言う。建物を立て直す際に現在店舗になっている部分を撤去したとの事。全盛期は原料の米を運び入れ、酒を運び出していたのだろう。毛利酒造は貴重な線路が残る歴史ある造り酒屋であった。
 探索を終えた夜、ビジネスホテルで祝杯をあげた。癖のないスッキリしたお酒で、日本酒はあまり得意ではないが少し冷やして2合くらい。素晴らしいトロッコ跡を見る事が出来ていい気分で1日を終えたのだった。

《データ》
■毛利酒造 [廃線]

◇福井県福井市東郷二ケ町36-29◇越前東郷 歩5
◇残存区間:店舗裏〜醸造場◇残存距離:約0.02km◇軌間:485mm◇敷設日:不明◇廃止日:不明

[探索日:2020.11.05]




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