■御大登場!「砂防軌道」で体験学習せよ!

1.予習(三度目の富山)
 世の中には何事にも避けて通れないモノがある。うどん屋の穴場中の穴場を取り上げて来た、あの麺通団でさえ、さぬきうどんの超有名店の「わら家」をレポートするのと同じ(トロッコマニアには分からんわ!)、トロッコを語る上でやはり「立山砂防」は外せない…、そう思うのであった。
 既に関西電力の項で発表した通り、我々軽探団一行は立山〜関電の夢のトロッコハシゴを目論んだのであるが、「想定内のまさかの落選」(なんじゃそりゃ!)で幻に終わったのであった。しかし落胆していた我々の元に、10月の部で当選通知が舞い込んで来たのである。これで砂防博物館の見学を含めて今年は3回も富山に行くハメになってしまい、富山の観光振興に携わる人たちの作戦にマンマとハマりながらも笑顔で家を出るのであった。

Tちゃん「嬉しいのか嬉しくないのかハッキリして下さいよ!」
S藤「まあ、嬉しいんやけどね。」
Tち「じゃあ素直に喜べばいいじゃないですか!」
S藤「そやけど立山〜関電は完璧な企画やったやんか。実現させたかったなあ…。多分、他のトロッコマニアも同じような事考えとんやろな。ひと昔前じゃあり得ん事やで!しかし年に3回も富山県に行くとはなあ…」

 10月5日、いよいよ我々は常に忙しい団長を一人残して念願の立山に向けて車を発進させた。

団長「俺も乗せんかい!」

 今回、団長は夜行の「能登」利用で富山入り予定で我々とは別行動だ。因みに団長は前回の黒部の帰りも「能登」だったらしい。
 で、こちら前ノリ先発隊は最年少団員H君の参加により、緻密かつ周到なナビで我々先輩陣は安泰である。12時に迎えに来てもらった私なんかは後部座席で今夜の肴は「やはり白エビやろなあ…」などと、ぼんやり考えながら車に乗っているだけであった。情報家としての任務を既に完璧に全うした後は後輩の運転に身を委ねるだけだった。う〜ん、楽チン楽チン。

H君「…ったく、Sさん何もしないんだから…、ブツブツ…
S藤「何か言ったかね?H君!」
H君「い、い、い、いいえ何も…、ブツブツ…

 今回の準備は実際に大変だったので、いつもより強気な態度に出ても大丈夫だったのである。不思議な事に何か不満ありげな様子のH君の事など全く気にならない。小田急線の某駅でビジターのHさんを拾い、中央道に向かう。車は快適(「あんただけや!」byH君)に走り、途中梓川PAなどに寄りながら夕方には富山市内に入った。早いな…。(「私が運転しよんじゃ!」byH君)

(注)今回の参加者は「H氏」「H君」「Hさん」とハ行の名前が多い。紛らわしいがすべて別人である。因みに「H氏」は名誉ある軽探団の初代団長、「H君」はご存知働き者、そして「Hさん」は団員ではなく私の大学時代の友人、登山家である。

 まずはH君が今夜の宿を手配。途中で目ぼしい旅館に電話をして予約完了。先輩達に宿を見て怒られはしないかと心配しているH君は「料金(の安さ)で決めましたから。」を連呼して予防線を張っている。

S藤「大丈夫、今夜は寝るだけだから。」
Hさ「俺も大丈夫よ!」
Tち「変な宿だったら承知しねえぞ!」

 Tちゃんは後輩には厳しいのであった。で、いざ、A旅館に到着してみると…、一行は一様に無口になったことは気にしないでおく。(流石大人の対応ですな!)

H君「やっぱり料金だけの事はありますね…。」

 H君の精一杯のセリフであった。Tちゃんが同部屋のH君に何を言ったかは知らない。しかし、それでも気を取り直して夜の富山の街へ繰り出すのである。全く土地勘がないので駅近くの裏路地にあった適当な居酒屋へ入った。

H君「全員、生でいいですか?」
一同「OK!」
S藤「ところで、実は明日の立山を前に重大な発表があるんや…。道中、考えに考えぬいたやけどな…、やっと答えが出た。」
Tち「何ですか?」
S藤「やはり肴はホタルイカではなく白エビやろ!」
一同「今更かいっ!」

 こうして富山の夜は更けていくのであった。

 呑んだ後、私とHさんはカルシウム含有の井戸水を使用した近くの銭湯へ行って立山を前に身を清める。(ただ単に大きな風呂が好きなだけや!)TちゃんとH君は宿の風呂に入ったらカランから赤い湯が出て来て怒っていた。もしかしたら富山付近で湧き出る鉄分が多い井戸水かも知れないとフォローしたが宿の料金だけで「水道管がサビてる」と判断されてしまった。
 翌朝、チョット早起きして宿を出た。立山までの道のりが良く分からず、時間が読めないからだった。決して早朝、急行「能登」で富山入りする予定の団長を見捨てたわけではなかった。

団長「俺も乗せてけよな」
S藤「いや、ここは無難に早出や!団長はいつでも会えるが砂防軌道は次いつになるか分からん!」
団長「やっぱり見捨ててるじゃねえか!」

2.体験学習(いざ立山!)
 好天の空の下に壁のような北アルプスの山並みが見える。この風景を見ると「富山の街はいいなあ」といつも思うのである。順調な道のりで立山駅まで来た。駅の近くの駐車場に車を停める。そして近付いて来る怪しい男は…、やっぱり団長や!

S藤「なんや、団長がおったの意識なくなっとったわ!」
団長「こら!一応団長だぞ!」
S藤「まあまあ、全員揃ったところで、とりあえず見学会の受付や!」

 参加費1700円を用意して受付へ。ここからは例によってヘルメット着用である。注意事項は適当に聞いて早いとこ列車に乗り込もう!(「コラ!ちゃんと聞かんかい!」by係員)

 で、立山砂防のレポートは色んなところで紹介されているので、ここからは文章は少なめで写真が中心です。(「別に手を抜いているわけではありません」byS藤)
 
 まずは構内のはずれにある「加藤」の元へ。すぐ横からは常願寺川の河川敷に向かって訓練線が延びています。

 
 見学会の列車は立山では基本の3両編成。見学会の定員20名と添乗員が乗車する。
 機関車は酒井の後を継いだお馴染みの北陸製。

  
 軌道の基地がある千寿ヶ原を出発!冬場でも確実に格納できる車庫はチョット芸術的な出来栄えだ。

 
 すぐにスイッチバックで一気に標高を稼ぐ。

  
 途中、何かの工事の為の側線があった。ナント活躍しているのはBLだった!振り返ると鉱車みたいのも見えた!

  
 本線もさることながら側線も気になる。(ほとんど病気だ!)

  
 眼下に見える軌道も魅力的!
 
  
 やはり立山砂防の真骨頂はスイッチバックだ。

 
 途中、水谷を目前に休憩を挟んだ。

  
 少し開けた場所に出たか思ったら終点の水谷だ。

  
 水谷では昼食がてら、散策の時間があった。一通り構内を見学する。
 因みに昼食は富山名物「鱒の寿司」である。

   
 水谷から徒歩でトンネルをくぐった。今は使われていない軌道が残っている。車を通すためか断面の拡張しているようだ。

  
 立山温泉跡などを回るが、温泉跡からは立山営林署の軌道跡も眺めることができる。
 写真では分かりにくいが植物が生えてるところと岩肌が出ているところの境目少し上が軌道跡である。(分かります?)

 この後、立山温泉の源泉を引いた露天風呂「天涯の湯」で帰りのバスを待った。私とTちゃんは温泉マニアでもある。湯を入れている最中の浴槽に飛び込みたい気持ちであったが、グッと堪え我慢我慢。用もなく手だけは浸けていた事は言うまでもない…。ここで働く人達の楽しみであれば仕方ないか…。

 
 バスに乗って帰路についた。終わった満足感と脱力感と…。悪路を走るバスは上下に揺れる。
 バスの車窓から遥か彼方に水谷出張所が見えた。広場のように見えた土地は斜面を切り拓いた危なっかしい僅かな場所だった。まるで鉄道模型のレイアウトを見ているかのようだった。

Tち「これって立山カルデラ砂防体験学習会というれっきとした学習会ですよね?」
S藤「そやけど、それがどないやねん?」
Tち「何を学習したんでしょうか?」
S藤「そりぁあ何や、砂防軌道は楽しいっちゅうこっちゃ!」
Tち「3回も来て何も学習してませんね!」
S藤「…」

 千寿ヶ原に戻って見学会は無事に終了した。

3.自己採点(おまけの話し)
 今宵はお馴染みH君手配の公共宿、亀谷温泉「白樺ハイツ」1泊2食7500円である。ひと仕事(どんな仕事や!)終えた安堵感からか温泉に入ってビールを呑んだら夜は熟睡であった。
 翌朝目覚めると雨だった。宿の目の前の大山町歴史民族資料館前に保存してある立山砂防の酒井は窓から見るだけで宿を後にした。
 帰りはゆっくり1日がかりで神奈川へ戻るだけだ。チェックアウト後はH君のリクエストで露天風呂で有名なO温泉へ。実は私は最初の立山詣で立ち寄っていた。その際、掃除直後だったせいか露天風呂にも関わらず塩素臭が漂っていてガッカリした経験があったのであまり乗り気ではなかった。今回は…?。内容は違ったが結果はNG。3回目はありません。気を取り直して青海にある「吉川鮮魚店」で昼食にする。ここはTちゃんが偶然見つけた軽探団が必ず立ち寄るお奨めの店である。わざわざ糸魚川を昼時に合わせてスケジュールを組むくらいだ。刺身が安価で食べられるので糸魚川方面へお出かけの際は是非立ち寄って頂きたい。メニューは特になく刺盛○○○円、ご飯と味噌汁って感じで注文する。酒類もある。因みにビールは酒屋で普通に買う値段で出てくる。酒で儲けようなんてことは全く考えていない潔さである。ただし、ここの刺身は桶盛りが基本なので個人よりもグループ向きである。店の構えは普通の魚屋だが、食事の客は裏から入る。(絶対寄ってや!)
 魚の後は再び温泉だ。能生町(現糸魚川市)の長者温泉へ寄ってみた。ここは温泉はたいしたことないが安価で泊まれる公共宿なのでチョットお奨め。
 帰りはH君とTちゃんの運転でスッと帰る。梓川PAと石川PAで休憩。

S藤「ところで団長の姿が見えんが…。」
Tち「今更ですか!」
H君「とっくに能登で帰りましたよ!」
S藤「何とか!」

 団長は能登が好きだったのである。
 今回の立山砂防の体験学習会は2泊3日4浴の充実の内容であった。(立山温泉に入れなかったのが心残りであるが…)

4.復習(更に後日談)
 実は立山砂防軌道に乗っている間も働き者のH君は働いていた。なんとビデオ録画をしていたのであった。後日そのビデオが送られてきた。早速再生する。ワクワクしながら最初の10分。少し飽きて倍速、4倍速…、早送り…。

S藤「単調すぎるわ!」

 皆さん、想像してみて下さい。あの速度で車窓を流れる景色。正直、途中からロクに観てましぇ〜ん。他のメンバーにも聞いてみたが結果はほぼ同じであったことはH君を気遣うと口が裂けても言えんが、キーボードが壊れても記載しておこう。(言っとるがな!)

《データ》
■立山砂防軌道 [現存]

◇富山県中新川郡立山町芦峅寺字ブナ坂◇立山 歩すぐ
◇区間:千寿ヶ原〜水谷出張所◇距離:18.2km◇動力:内燃◇軌間:610mm◇運行開始:1926年
◇参考:知られざるナローたち・ナローの散歩道など多数 意外なところで「南鳥島特別航路」(池澤夏樹著)
 

[調査日:1999.10.06]



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