■知られざる地下軌道に潜入探査せよ!



 京急の南太田駅から通りを横切ってスーパーライフの角を入りカクっと曲がって(どんなんや!)橋を渡ると蒔田公園があり、その広場の向こう側に防音ハウスが建っている。まさかこの地下がトロッコ軌道の起点になっている事は素人さんには分かるまい。
 この工事現場の見学会が行われている事を横浜市環境創造局のホームページで知り申し込んでみた。実は申し込みの時点ではトロッコ軌道が使われている事は判らなかったが、下水道のシールド工事と聞いてトロッコがあると踏んで申し込んだのだった。詳細はホームページで確認していただくとして、見学会は年内の毎月最終土曜日に午前、午後の2回実施されていて定員は1回20名である。どの程度の参加率なんだろうか?この手の申し込みは立山以来である。が…、電話で申し込むとアッサリOK。ホントにこれで申込み完了なのか?そして電話から暫くたったある日、一枚の葉書が届いた。見学会の案内であった。
 当日、台風の影響による小雨の中、現場の防音ハウスに近付いてみると、その壁に工事の概要が説明してあり、トロッコ軌道の写真も貼ってある。「やはり軌道はあった!」(これなら素人さんでも分かるがな!)掲示物の中には見学会の申込者数があった。10月の午前以外は定員割れであった。で、今回は…、じゃ〜ん!6名…。(あっちゃ〜人気あらへん…、しかも10月の20名は団体やないんか?)そして集合してみると、3名キャンセルで結果3名でした…(トホホ)見学会の工事関係者も3人…。
 見学会は最初に環境創造局の担当者から工事の概要説明を聞き、その後、シールド工法のDVDをみて、鹿島建設の現場担当者から工法などの説明を受けて、いよいよ現場見学開始となる。
 ヘルメットを被り軍手をして、まずは立坑の急階段を降りる。エレベーターなどない。坑道の起点は地下約20メートルの地点である。途中、安全ネットで下が見えなかったが、階段を降り切るとそこが軌道の起点部だった。一応屋根付きの小さいBLと車高の低い2両の長物車が停まっている。作業は休みなのでBLは充電中であった。あまり見慣れない形状のBLでメーカーが判らない。車体には車番と思われる「275」と1650kgの表記があるだけだ。稼動しているトロッコはこの3両だけのようで、セグメントというトンネルの壁面になる資材を積んで推進運転で現場へと向かう編成になっている。
 軌道は発進立坑から南東方向へ進むが、すぐに右にカーブして進路を南西方向へ変える。地上の道路に合わせて曲がるためR30の急カーブである。進路を南西方向に変えた後は1箇所少し左カーブするだけで、ほぼ直線に進んでいた。地図でみると大岡川と地下鉄ブルーラインの間の細い道の下を通っているらしい。下水道を上流に向かって進むため若干上り勾配になっていると言うが傾斜は全く感じない。
 見学会は軌道に並行して続く通路を歩く。約300メートル毎に土砂を送り出す中継ポンプがあり、その部分だけが通路が軌道内に入り込む。そのポンプなどの機材は全て立体的なフレームの付いた軸間の長い台車に載せられていて、台車の下にはレールも敷設してあって、この部分だけは複線のように見える。(本線とは接続はしていないが…)掘削現場へ向かう内径3250mmの細長い管の中は単調な道が続く。意外にも地下は蒸し暑い。現在の掘削現場は発進立坑から1050メートル地点であった。最終的には弘明寺の南スポーツセンター付近にある到達立坑までの1944メートルのトンネルになり、弘明寺駅近くではR10の超急カーブが出来る計画である。(シールド工法ではこの急カーブが難しいらしい)半径10メートルのトロッコ軌道も見てみたいものだが、果たして最後の見学会で到達しているかどうか?
 掘削地点にはシールドマシンを制御する操縦席があるがコンピューター制御のためシンプルな構造だ。ここに人がいなくても地上でも操作は可能らしい。一番奥にシールドマシンがあり、そのすぐ手前で軌道はプッツリと切れていたが車止めなどなく、すぐにレールが継ぎ足せるようになっている。帰りも同じ道を通って発進立坑まで戻った。中は少し汗ばむくらいだったが発進立坑は少し冷たい外気が上から降りてきて少し涼しく感じた。階段を登り立坑を上から覗いてみるとトロッコの台車が真下に見える。資材をクレーンで降ろし、効率良くそのまま積めるようになっているためだ。
 約2時間の見学会を終えて防音ハウスの外に出ると地下とは別世界の台風一過の青空が広がっていた。地下にトロッコが走っている事など全く想像できなかった。

《データ》
■南部処理区大岡川右岸雨水幹線下水道工事軌道(鹿島・五洋・松尾建設共同企業体) [現存] HP

◇神奈川県横浜市南区宿町1-1◇南太田 歩5
◇区間:発進立坑〜掘削地点◇距離:1.050km(2010.09.25現在・延伸中)◇軌間:610mm◇動力:蓄電池
◇2010.02開始◇2011.03終了予定
 
《車輌データ》
◆01:275号 BL(B型 1.65t 610mm)
◆02:FC(鋼製ボギー長物車 610mm)
◆03:FC(鋼製ボギー長物車 610mm)
◆04:FC(機材設置用2軸台車 610mm)十数両


[調査日:2010.09.25]


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