■古都鎌倉の老舗酒屋を探れ!

 鎌倉で最も観光客が多い鶴岡八幡宮から由比ガ浜へ続く若宮大路の道路脇に延びる短く小さな軌道に気付く人は少ないが、古い建物の酒屋は存在感があり、足を止め中を覗いて土産に地元の酒、ビール、清涼飲料などを買い求める人は少なくない。ここ三河屋本店の創業は明治33年(1900年)、建物は昭和2年(1927年)に建てられたもので鎌倉市の景観重要建築物に指定されている。軌道はその建物が建てられた時に敷設されたらしい。
 店のすぐ横から奥へ延びる軌道は店舗の建物を過ぎると少しS字にカーブして蔵の前で終わる。全長は30メートルくらいだろうか。軌間は610mm。以前は軌道のある通路が隣の建物と接近して狭かったがリニューアル後に広がって見通しが良くなった。いつも軌道の一番奥に木製の台車が停まっているが、軽トラが奥まで入るようになった今でも時々出番があると言う。この時代に貴重な現役の街角軌道のひとつだ。
 三河屋本店へは自宅から近い事もあって比較的良く探索する。通路横でカメラのレンズを奥へ向けていると、何事か?と思って一緒に視線を奥へ向ける人が多い。そして線路の存在に気付き一様に驚くのが意外と楽しく感じたりもする。
 軌道自体は敷設後90年近く経っているが、いつも軌道の一番奥で待機している台車は三河屋本店オリジナルではなく、長谷の萬屋本店から使われなくなったものを譲り受けられて来たものというのが地元のトロマニアの間では定説となっている。
 歴史、価値、景観…、古都鎌倉に存在するこの古い街角軌道は間違いなく遺産級である。

《データ》
■三河屋本店 [現存]

◇神奈川県鎌倉市雪の下1-9-23◇鎌倉 歩10
◇区間:商店店先〜倉庫◇距離:約0.03km◇軌間:610mm◇動力:人力
◇敷設日:1927年
 

《車輛データ》
◆01:三河屋本店 FC(木製2軸平台車 610mm)←萬屋本店

参考文献:RM284p118(2006.12)・知られざる鉄道決定版p138-139・とれいん498p64-65(2016.03.12)

[探索日:2016.03.26]




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