■線路脇の路地を探れ!



 この軌道の存在を知ったとき、自分の洞察力の無さを感じたのと同時に「未知のトロッコはたくさんある!」そう確信した。何たって、何度も通った京急沿線の車窓のすぐ下にトロッコの線路があったことをレイルマガジン誌上に発表されるまで気づかなかったのだから…。しかもこの怪しげな工場の存在まで気づいていたのに…。
 以後、ここに何度も通うことになった。1995年2月に初めてこの軌道を訪れて以来、バイクで第一京浜(国道15号)を走る時はわざわざ脇道に入って軌道敷上を走ったりする。
 JRと京急に挟まれた狭い空間に延びる一筋の軌道は当初、推定で80〜90メートル程度の距離だった。滝坂踏切の一般道から京急の線路と並行に延びた軌道は路地がクランク状になったところで民家にぶつかる形で終わる。初めてここを訪れたときには既に工場は稼動していなかった。レイルマガジンでは鉄工所と報告されているが、窓の隙間から中を覗いた印象では木工系の作業所に思える。
 初訪以来、15年以上になるが少しずつ廃れて来ている。工場入口から軌道上に架かっていた庇はいつの間にか無くなり、2010年11月頃には民家の建設に伴い車の出入りの為、ついに軌道が一部(目測で30メートル強)が撤去されてしまった。今後も工場自体がどうなるか分からないが、工場前の線路際の狭い空間に植えられている銀杏の木はいつも季節感を出していて、見るたびにホッとするのである。この銀杏の木と共に軌道がいつまでも残って欲しいと願うばかりである。

 ※2012.08.29現地探索にて軌道の完全撤去を確認いたしました。

《データ》
■平戸製作所 [廃線]

◇神奈川県横浜市神奈川区子安通3-380◇京急新子安 歩10
◇残存区間:工場付近◇残存距離:0.06km◇軌間:610mm◇動力:人力(推定)◇敷設日:不明◇廃止日:不明◇部分撤去:2010.11
◇参考:RM139p68-69
 

[調査日:2010.11.28]




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