■塀の中の軍事機密を探れ!


 数あるトロッコのジャンルの中でも『軍用軌道』と言うとその性質上資料も少なく、秘密裏に稼動していたため知られていないものが多い。敷設方法が簡易で、実動時期も第二次世界大戦前後の短い期間に限定されたり、戦後は撤去が早かったりと調査条件が非常に厳しい。その為、紹介される機会も少ない幻の軌道である。WEBで『軍用軌道』で検索しても、ヒットするのは大部分が「習志野」か「赤羽・王子」の軌道であるが、そんな中、トワイライトゾーンマニュアルに掲載された平塚の海軍火薬廠の軌間610mmの廠内軌道残存の記事は短い記事ながらもインパクトが強かった。
 その後、この軌道については強い興味があったが、民間工場内の非公開軌道ということで見るのは無理だろうと思っていた。が、WEB上で簡単な写真が掲載されていたのを見て、もしかしたら…、と思い、とりあえず現地へ行ってみることにした。
 平塚駅から徒歩で約15分、平塚市新庁舎のすぐ裏手に軌道跡が残存する「富士チタン工業」の工場があった。一応、広く開けられた正門から中を覗いたら、確かに海軍時代の古い建造物が並んでいたが軌道は見えなかった。非公開なので中に入りたい気持ちをグッと押さえて、工場の周囲を回る事にした。門のある工場西側から北側を回り東側へ…。ここまで塀が高くて中が見えなかったが、東側の塀は古い塀で徐々に低くなり、背伸びすると少しだけ中が見える。
 平塚市博物館に保存してあるD51の所まで来た。工場の敷地はここまでだ。最後に低くなった塀の上から覗いて見ると…。あった!何と70〜80m先に僅かではあるが軌道が確認できる。博物館の花壇の淵に乗って200mmのレンズで撮影したのが上の写真だ。ギリギリ塀の上をかすめて撮影できた。
 尚、WEB上で見た写真は軌道跡をほぼ真上から撮影しているので、上の写真の左側にある市役所新庁舎の塀から狙っている。そちらの塀は結構高いので、踏み台か何かに乗って撮影したもののようだ。
 公道からほんの少しだけ垣間見ることができるこの軍用軌道。僅か10m程度とは言え、残っていることは真に奇跡としか言いようがない。

《データ》
■富士チタン工業 [廃線]

◇神奈川県平塚市浅間町12-8◇平塚 歩15◇非公開・公道より確認できる
◇区間:工場内◇距離:約0.01km◇軌間:610mm◇動力:不明◇敷設日:不明◇廃止日:不明
◇参考:トワイライトゾーンIp40(2001.02.27)
 

[調査日:2008.06.17]

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