■谷底に埋もれるトロッコを探れ!

 奥多摩には何かがある…、トロッコマニアの間では以前から語り継がれている話しだ。JR奥多摩駅から西方の山中は奥多摩工業の手によって採掘されている石灰石鉱山の鉱区が広がり、未知の坑口が多数存在するというが…、地形図ではいくつか坑口の印が確認できても、如何せん未知なのである。今回報告する場所にも地形図にはない坑口が存在した。
 その奥多摩の山中の谷底に土砂崩れで崩落した線路と埋もれたBL、鉱車があるという情報は以前から噂されていて、WEB上でも確認(鉄系よりも廃墟系で)されていたが、その所在地がイマイチ明確ではなかった。今回、調査を進めて、ようやくポイントが絞り込まれたのでダメ元で出掛けてみることにした。
 奥多摩駅から日原集落へ向かう日原街道を行くと、集落手前に長〜い直線道路の日原隧道があって、その隧道を抜けてすぐの橋の下が例のポイントであった。そして橋の上から下の方を覗き込むと…、何と木々の隙間から僅かに線路が確認できたのであった。11月の後半で葉がだいぶ落ちていたのが良かったのであろう。恐らく夏場は葉に遮られて視認困難だ。橋の袂に崩れかけたコンクリートの階段が下へと続いていた。近くの駐車スペースに車を停めて慎重に階段を降りてみると、トロッコの線路と傾いた鋼製の鉱車があった。意外とアプローチは楽であった。
 線路を辿って行くと途中の谷筋のところで線路は無くなっていたが、その延長線上の山肌には坑口がポッカリと口を開けていた。どうやら軌道は、その坑口から出て来ているらしい。坑口までは歩けるようになっていたので接近してみたが柵で塞がれていて中へは入れず、線路も撤去され、ただ水が流れ出しているだけだった。
 軌道は谷筋のところで土砂崩れを起こし崩落してしまったらしい。そこから下方を覗くと土砂に埋もれた鉱車が確認できる。谷筋の斜面を慎重に降りながら鉱車の数を数えてみると5両は確認できた。そして最下方には逆さまになって半分が土砂に埋もれたBLが…。快晴の秋晴れの下での探索だったので平常心でいられるが、薄暗い夕暮れや曇天の時だったらかなり不気味な感じになるであろう。
 一通り探索し上へ登るとバッテリーケースが埋もれているのが確認できた。更に最初に見た鉱車の横にはナベトロと思われる「ナベ」が転がっていた。
 階段上の日原街道まで上がると、上からは全く想像できない廃トロッコの世界…。やはり奥多摩には何かがある…。きっとまだ他にも…。

《データ》
■奥多摩工業日原 [廃線・放置]

◇東京都西多摩郡奥多摩町日原◇奥多摩 バス(日原隧道西口)
◇残存距離:約0.03km◇軌間:762mm◇敷設日:不明◇廃止日:不明
 
《放置車輌データ》
◇01:BL(B型 762mm)
◇02:FC(鋼製鉱車 762mm)
◇03:FC(鋼製鉱車 762mm)
◇04:FC(鋼製鉱車 762mm)
◇05:FC(鋼製鉱車 762mm)
◇06:FC(鋼製鉱車 762mm)
◇07:FC(鋼製鉱車 762mm)
◇08:FC(ナベトロ 上回りのみ)

[調査日:2011.11.22]




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