■銀座のビルの壁面を探れ!


 このタイトルを見てピンと来る方は相当な重症患者とお見受けする。で、「何なんじゃ、こりゃ?」と言う一般の方にレポートを…。
 東京の中心地「銀座」の更にド真中、銀座4丁目交差点の1ブロック隣り、銀座5丁目交差点の角に建つ「黒沢ビル」の北側壁面にあるのが上記写真のモニュメントだ。この前をたくさんの人が行き交うが、ここで足を止めて見る人はいない。ビルの壁面から飛び出したレールの正体は一体何なんだろうか?
 説明文によれば、このレールは旧黒澤商店ビルを建造する際、基礎の補強材として利用されていたモノだと言う。

 『旧黒澤商店ビルは設計・工事監督ともに黒澤貞次郎(1985-1953)によってなされ1909年から三期に分けて工事が行われ1912年に完成した これは我が国最初の鉄筋コンクリート造りの事務所建築とされている 基礎と構造体の補強には当時の通称外濠線電車のレール等が使用された(1903年製)』(説明文原文)

 私には「外濠線電車」に関する知識が全く無かったので、まず外濠線について調べてみると、1904年に新橋北口〜御茶ノ水間に開業した東京電気鉄道の事らしい。後に他の市街電車と合併し更に東京市に買収されて東京市電(後の都電)となった。ということは路面電車に使用される右の段付きレールが外濠線のレールということになろう。製造年も一致する。では左の細いレールは何に使われていたのであろうか?サイズを計測してみると以前に当HPで「史上最細レール」として紹介した山口県の榎山炭鉱の柵に利用されているものとほぼ同じサイズであったが、こちらの方がレール頭がやや狭い。これは機関車を使用しない超簡易トロッコのレールサイズと言える。説明文にはこれ以上の記載がないので、ここから先は推測になるが、外濠線の敷設工事や道路の整備工事等で使用されたレールではなかろうか?
 雑踏の中で僅かに顔を出すレール、その素性を思い巡らすだけでも楽しくなりませんか?

《データ》
■黒沢ビル(旧黒澤商店ビル) [その他]

◇東京都中央区銀座6-9◇銀座(A2) 歩すぐ◇終日可◇1980年12竣工
◇レール頭幅15mm・高さ45mm・底面幅40mm(実測値)
 

[調査日:2010.03.23]


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