■レトロ看板の酒屋を探れ!

 トロッコマニアには有名なお店なので、今更説明するまでもないが、古い町並みが残る佐原の小野川沿いにある大野酒店には今でもトロッコのレールが残る。これは建設省の利根川下流工事事務所で使用されたトロッコのレールと土運車の払い下げで作られたものだ。今ではトロッコは使用されなくなり、元土運車だった平台車は国土交通省へ返還寄贈され水の郷佐原で展示保存されてレールだけが残った。
 普段は閉まっている門の下からちょこっとレールが見えているだけで中々軌道全体を見る事が出来なかったが、東日本大震災で門が閉まらなくなり軌道全体が丸見えの状態になってしまった。震災の影響は門だけなく、軌道敷きもヒビ割れ、更には奥の倉庫まで被害を受けてしまった。
 訪れたこの日は奥の倉庫の修復作業中で、ご主人も丁度、通路を掃除している最中で、話を伺いながら写真を撮らせていただいた。撮影の合間、アルバムの写真やここが紹介された鉄道誌なども見せていただく。その中にはこの軌道の全盛期の写真もあった。店の前に横付けしたトラックの荷台からトロッコの荷台に載せ換えられた醤油ケースは一度で48箱、重さは2tにもなり、それを一気に倉庫まで押し込む…。こんな運搬が短時間に少ない人手でできるのはやはりトロッコ以外になかったと言う。
 地震で佐原の街が意外と大きな被害を受けている事…、レールはステンレスの成分が含まれていて錆びにくい事…、建設省の人が台車を持って行った時の事…、モデルさんが来て撮影会をした事…、話は尽きない。中身の濃い滞在時間30分だった。

《データ》
■大野酒店 [廃線]

◇千葉県香取市佐原イ-489◇佐原 歩15
 
◇区間:店舗〜倉庫◇距離:0.032km◇軌間:610mm◇敷設日:1950頃◇廃止日:不明
◇参考:トワイライトゾーンマニュアル\p18-24(2000.04.08)・TP785(2006.06.18)・Tr434p88-89(2010.11)

[調査日:2011.08.25]




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