■茂原の保存人車を探れ!


 意外にも人車軌道は全国に数多く存在していたが、あまりの軽便さ故、運行期間は短く撤去も容易であったのでその痕跡を留めるものは少ない。
 最近になって昔を懐かしむ地元の方々が人車を復元するケースも増えて来たが、現車となると希少である。宮城県の松山と埼玉の鉄道博物館に保存されている人車は廃止後に再利用されていた現車を修復させたものだ。そして茂原市郷土資料館に展示の人車も貴重な現車を修復したものだ。
 しかし松山の2両はある程度記録が残り公開されているものの、茂原の人車の素性はあまり知られていない。地元民家の倉庫として利用されていたもので、資料館の説明書きには「唯一現存する貴重なもの」とあるだけで、廃止後、一体何処でどの様に保存され、どう言う経緯でここの来る事になったのか?
 2009年に茂原を訪れてみた。外房線茂原駅から西の方向へ歩く。駅からの距離は2kmくらいだろうか。茂原公園の奥に美術館と郷土資料館があり、人車は資料館の中に保存してある。資料館の入口を入ると最初に人車が目に飛び込んで来た。入館は無料。受付よりも手前に人車が展示されているので、人車目的で来る人は入口だけで帰ってしまうので怪しさ爆発である。
 展示してあるのは車体のみで下回りはなく、木枠の上に置かれていて神輿のようであった。車輛の他に簡単な説明書きがある。それによれば客車は中古品を購入したらしい事が記述されている。もし中古だとすると茂原以前に廃止になった人車軌道は藤枝焼津、豆相、野州なので、このあたりから来たものだろうか?残されている人車の写真などを探ると宇都宮のものが近い形状をしている。
 茂原長南間軌道は明治42年(1909年)、鉄道連隊のレールを借用して開業。廃止は大正15年(1926年)である。明治期の製造であろう客車の扉上部のアールは当時の職人さんの粋や技を感じたりもする。復元ではない現車を是非探索して下さい。

《データ》
■茂原市郷土資料館 [保存]

◇千葉県茂原市高師1345-1◇茂原 歩30◇9:00-17:00・月曜日休館◇入館無料◇P
 

《車輛データ》
◇01:茂原長南間軌道 PC(木製2軸 762mm)車体のみ

◇参考:RF485・RF555・全国保存鉄道2・全国軽便鉄道・人が汽車を押した頃・全国フシギ乗り物ツアーp16-17・帝釈人車鉄道p92・ちば県民だより2009.08号・RF666p49(1999.11)・究極の現役ナローゲージ鉄道p114 

[探索日:2009.09.03]




inserted by FC2 system