■自家製ゲテモノロコを探れ


 トロッコ界の中でも屈指のゲテモノロコで知られた伊勢孫本店であったが、既に廃業してしまい今では跡形もなくなってしまった。廃業を知らずに訪れた2009年には何処に店があったのか?分からないほど現地は変貌してしまっていたのだった。後で調べてみると廃業は2000年〜2001年頃のようである。その伊勢孫本店の軌道を探索したのは正確な記録がなく1987年頃と思っていたが、写真を見ると1987年12月17日に発生した千葉県東方沖地震の後であることが推測できた。写真の様子からはあまり時間が経っていない感じが読み取れるので、探索したのは1987年末から1988年前半だと思われる。
 この軌道が世に知れ渡ったのはレイルマガジン誌であった。「街角軌道」というジャンルを知らなかった当時は衝撃的な軌道であった。そしてまたそこで働いている機関車が凄かったこと!
 東金駅から徒歩で10分足らずの街道沿いの丁字路に面して古い店があった。軌道は店の前から始まり90度向きを変えて店の横の通路を進み、裏の作業場の前から更に緩い勾配を登り、山の斜面に作られた室(むろ)まで達していた。途中、カーブがあったり、ターンテーブルなどで分岐したりと変化に富んでいる。数ある街角軌道の中でも群を抜く規模だった。ここの軌道はゲテモノロコだけではなく軌道自体も魅力的であった。
 お目当ての機関車は側線上にシートが掛けられて停まっていたがゲテモノぶりは良く分かる。動輪の数は不明だが4軸ある。動いている姿が見られなかったのは残念である。
 探索の時、店の扉を開けると大女将らしき方が出て来られて快く中へ通された。奥の室近くまで探索した後、店まで戻りお礼の挨拶をすると笑顔で見送ってくれた。結局、探索したのはこの1回きりである。
 現在、店の跡地には老人ホームらしき福祉系施設が建っている。この素晴らしい軌道を再訪することなく撤去されてしまったことや、当時、東金にあった2つの街角軌道をロクに探索をすることなく街をあとにしたことを今更ながら後悔している。

  

   

  

 

《データ》
■伊勢孫糀店本店 [現存]※撤去済み

◇千葉県東金市東金上宿1376◇東金 歩5
◇区間:店舗前〜室◇距離:0.09km◇動力:内燃・人力◇軌間:455mm
◇敷設:1950頃
◇廃止:2000〜2001頃
 
◇参考:RM001(1982.01)・RM003・RM013・RM018BEST・トロッコ・RM019p54・トワイライトゾ〜ンマニュアル\(2000.03.11・2000.03.26)

《車輌データ》(2000.03.26時点)
◇01:伊勢孫 DL(伊勢孫/4軸)
◇02:伊勢孫 FC(大トロ 木製台車)
◇03:伊勢孫 FC(大トロ 木製台車)
◇04:伊勢孫 FC(大トロ 木製台車)
◇05:伊勢孫 FC(中トロ 木製台車)
◇06:伊勢孫 FC(中トロ 木製台車)
◇07:伊勢孫 FC(中トロ 木製台車)
◇08:伊勢孫 FC(中トロ 木製台車)
◇09:伊勢孫 FC(小トロ 木製台車)
◇10:伊勢孫 FC(小トロ 木製台車)
◇11:伊勢孫 FC(小トロ 木製台車)
◇12:伊勢孫 FC(小トロ 木製台車)
◇13:伊勢孫 FC(台車)
◇14:伊勢孫 FC(台車)

[探索日:1988頃]




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