■微かに残る軌道を探れ!


 ある日、酒蔵見学をメインにしたブログを覗いていたら、この酒蔵を紹介していた。酒蔵自体には特に興味はないのであるが、結構トロッコが使われていたりするのでヒマな時にチェックしている。その中で明確には記されてなかったが、何となくトロッコ跡があるようなくだりがあった。掲載されていた写真にも線路らしき筋がボンヤリ写っている。場所は騎西町、どうやら加須〜鴻巣間のバスの沿線らしい…。加須と鴻巣と言えば共にトロッコの街ではなかったか?早速、抱き合わせで決行だ!
 加須で加藤商店のトロッコを見学した後、駅前から鴻巣行きのバスに乗った。やがて騎西町の中心部を通る。昔は騎西町にもいくつかトロッコを使用していた商店があったというが、現在は無いと聞く。目的の清水酒造は少し鴻巣寄りのところにある。
 加須駅から約15分、松原というバス停で下車した。日本酒愛好家には人気の酒蔵ということだったので、何かしら看板らしきものがあるだろうと踏んで行ったがバス停付近には何も目印がない。事前の調べで大方の方角は分かっていたので、見当をつけてとりあえず歩き始めた。バス停から東へ農協の大型施設を目指す。清水酒造はすぐ隣にあるはずだ。歩くこと約20分、木々に囲まれた、それらしき雰囲気を醸し出した場所があった。中は見えないが醸造樽が転がっているのが確認できた。ここに間違いない。
 通りから奥まったところに門があった。開いていたので中に入った。入った正面に醸造場がありトロッコ跡が見えるが、どこで挨拶をすればいいのか分からない。手前の建物から順に近づいて「ごめんください」と声をかけてみるが誰も出て来ない。しばらくウロウロしていたら一番奥の建物から女将さんらしき人が出てきた。撮影をお願いすると快くOKを頂いた。微かに残る軌道奥の醸造場では仕込みの真っ最中だった。醸造場まで軌道が敷かれているとのことだったが、大事な作業中なので屋外部分だけ撮影した。軌道跡は短かったのですぐに終わった。以前は門のところまで軌道があったとのことだったが、邪魔なので一部撤去し、あとはそのまま野晒し状態してあるらしい。流石にレールも腐食がひどく形状が崩れている部分もある。
 軌道跡のすぐ横に事務所があった。中では酒の入ったビンにラベルを一枚一枚手作業で貼っていた。お礼を言うと珍しいものがいるから見ていきなさいと、鳥小屋へ案内された。金網の中には白いカラスがいた。このカラス、地元では有名らしくテレビの取材が何度も訪れたとのこと。また、ここで造られた日本酒はなかなか入手が難しく、わざわざ遠方から直接買付けに来る人も多いという。私はトロッコ以外に興味がなくここを訪れたが、実は超有名酒蔵だったようだ。晴れ渡った青空の下、バス停までゆっくり戻った。

《データ》
■清水酒造 [廃線]

◇埼玉県北埼玉郡騎西町大字戸室1006◇加須 バ15(松原)→歩20
◇残存区間:醸造場〜事務所前◇残存区間:約0.03km◇軌間:508mm◇動力:人力◇敷設日:不明◇廃止日:不明
 

[取材日2008.11.04]


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