■完全遮断の鉱山を探れ!

日豊鉱業武蔵野炭鉱


 日本に残る数少ない稼動中の炭鉱である武蔵野炭鉱。世間ではあまり知られていなくても、トロッコマニアの間ではチョー有名だ。しかし、ここは見学者は一切立入り拒否という厳重警備でトロッコマニア完全遮断の鉱山である事でも知られていて、以前に紹介された記事はあるが、最近では全く紹介される事もなくなっている。そんな見ることの出来ない鉱山が俄かに話題を集め始めたのは、平成9年7月に鉱山のすぐ隣りに開園した「あけぼの子どもの森公園」の影響である。この公園から鉱山内が丸見えという話題がWEB上で語られるようになり、ついにはトロッコの写真なども載るようになった。それじゃ、チョット覗きに行ってみますか!と言う訳で出かけてみました。
 武蔵野鉱山は飯能市の端、入間市に近い所にある。交通の便が悪いと思われがちだが、意外にも西武線の元加治駅から徒歩で20分の距離である。元加治駅から踏切を越えて入間川を渡り信号を右折するとやがて左手に野球場が見えてくる。目指す公園は野球場のすぐ裏で、野球場横の駐車場を抜けると公園の入口があり、向うの山の斜面には鉱山の施設が見える。簡単な造りのゲートをくぐり坂道を登ると微かに石炭の香りがする。柵の向うにはズリなのか濡れた石炭の様なモノが積まれていた。綺麗に整備された公園とは対照的な光景だ。坂の上には童話「ムーミン」をモチーフにした公園が広がり子どもたちが楽しそうに遊んでいた。野郎一人ではやや場違いであったが、更に山の斜面を登り最上の「森の家」と言う施設まで来た。
 すると柵の替わりに植えられている木の間から鋼製の鉱車が連なっているのが見えた。丁度、トロッコが見える部分だけ間隔が少し拡がっている。鉱山に立ち入る者がいるのか、立入禁止の札とロープが張られていたが、あまり効果は無さそうである。公園の敷地ギリギリの所まで行って隙間から鉱車の写真を撮った。鉱車は10両以上はありそうだ。側線には1両だけ台車が留置されている。若干、場所とアングルを変えて何枚か写真を撮影したが、良く見ると奥の方にたくさんの人がいて何やら騒がしい。やがて、一人の中年男性と二人の若い女性がこちらに向かって歩いて来た。写真撮影がマズかったか?と思って様子を窺っていたら、木の間を抜けて公園に入って来て、私の前を通り過ぎた。どうやらトイレを探しているようであった。みんな、ゴム長とカッパにズボンを履いている。「大学の地質学のゼミか何かであろうか?」と勝手に推測した。暫く写真を撮ったが限られたアングルからしか軌道が臨めない。30分近く覗いていたが残念ながらトロッコが動いている姿は見られなかった。
 カメラをカバンに収めて帰り支度をしていると、公園の管理人さんが通りかかり、先ほど鉱山から抜けてきた男性に「お隣さん、今日は賑やかだねえ、何かやってんの?」と話しかけると、「ドラマの撮影です」との答え。更に「へえ〜、誰か有名な人、来てるの?」と訪ねると、「来てますよ〜。」と言って含み笑いを浮かべながら再びヤマの中の集団に戻って行ったのだった。

《データ》
■日豊鉱業武蔵野炭鉱 [現存]

◇埼玉県飯能市阿須891◇元加治 歩20◇見学不可
◇区間:鉱山敷地内◇軌間:762mm・500mm◇動力:内燃・人力◇敷設日:不明

《参考データ》
■あけぼの子どもの森公園
◇埼玉県飯能市阿須893-1◇元加治 歩20◇9:00-17:00・月曜日◇無料◇無料P・売店あり
 

[調査日:2009.10.29]




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