■素掘り坑道を探れ!


 遅い昼食を食べ、秩父鉄道の目玉であるSLを写真におさめ、向かったのがここ吉沢だった。以前Iが訪れた時は、受付けの女の人に「ここにトロッコガあると聞いて来たのですが」と言ったところ、「ここにはそんなものないよ」と軽くあしらわれ、止むなく引き下がったそうだが、今日は日曜日なので入口の受付けには誰もいない。とは言っても無断で立入るわけにはいかず、奥でブルを転がしているオッサンに聞いたら「この上にあるよ」と、あっさり教えてくれた。
 言われた通りに小径を登っていくと、数十メートル上がったところに、草に埋もれたレールがあった。もう使われていない事を知りながらやってきたのだが、やはり廃線を見るというのは、何となく切ないものだ。
 線路は坑口から2〜30mぐらい延びて、円筒形のホッパーへと向かっている。軌間は実測で700mmでかなり細いレールを使用していた。もともと機関車を使わない人力トロッコだったので、これくらいの太さで充分だったのだろう。
 坑口から中を覗くと坑道はほぼ一直線で、向こうの口まで見えた。中は所々、裸電球が点々と灯されている。現在は採石場までのトンネルとして、使用されているようだ。
 坑道の中は素掘の壁が続き、不気味な感じである。途中、中間点ぐらいのところ右側に口があいており、採石場に出られるようになっていた。採石場の向こうには、ダンプとブルドーザーが止まっている。どうやらここからダンプで直接運びだしているようだ。
 一通り見終わって下に降りると、ブルを転がしていたオッサンが「あれももう危険だから穴を塞ぐんだ」と言っていた。それを聞いてまた一つトロッコが跡形もなくなるのかと、また切なくなってしまうのだった。

《データ》
■吉沢石灰工業秩父工場 [廃線]

◇埼玉県秩父郡横瀬町7898◇横瀬
◇区間:鉱山内◇距離:約0.2km◇動力:人力◇軌間:700mm(実測)◇敷設日:不明◇廃止日:不明
◇参考:RM005p63

[調査日:1988.10.30]



  


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