■真夜中の怪しい探索隊


 秩父で唯一24時間営業のレストラン”スカイラーク”を出て真夜中のR140を三峰へ向かってひた走った。やがて左側に且O峰石灰産業の看板が見え、住宅地へ入ると、突然目の前に踏切がヘッドライトに浮かんだ。軌間508mmの複線になっていて、細いレールの間にはエンドレスロープのと思われる溝がある。しかしレールがあるのは、踏切の部分だけでコンクリートで固められた部分だけ仕方なく残ったという感じである。
 左手奥にうっすらと工場が見えたので、そっと車を乗入れた。ほとんどこそ泥のようである。中には使われていた、トロッコが山積みされている。目を凝らしてよく見ると、6両程ある。さらに奥へ進むと、ポイントが残っていて左奥の倉庫の様な建物へむかっている。ポイントのすぐそばには、ウインチ小屋が残っていて中にはパレットや一輪車などが無造作に置かれていた。目は暗闇にだいぶ慣れてきたが、寒さが体に染みてきた。そう言えば正丸峠あたりでは、みぞれ混じりの小雨が降っていた。ポケットに手を突っ込み車へ潜りこんだ。そしてまたさっきの踏切まで戻り、かつての廃線跡を眺めてみたが暗闇で何も見えなかった。地図によれば武州中川駅の近くにも踏切があったようなので、そっちへ回ってみたが、同じ様な感じで踏切あとが残っていた。ここから駅の方を見てみたが、積込みホームの跡は残っていないようである。
 とにかく寒い武州中川を後に今晩の仮眠地である、三峰口へ向かうのであった。

《データ》
■三峰石灰産業中川工場 [廃線・保存]

◇埼玉県秩父郡荒川村上田野1308◇武州中川 歩10
◇区間:工場〜武州中川貨物ホーム上◇距離:0.68km◇動力:蓄力→円索・人力◇軌間:508mm◇敷設日:1941頃◇廃止日:1984.01.20◇撤去日:1986.08頃
◇参考文献:RM001p54(1981.05)・知られざるナローたちp32(1979.12・1980.06)・TP506など

[調査日:1988.10.30]


  


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