■古い商家の復活軌道を探れ!


 それにしても埼玉県には何故街角軌道が多く残るのだろうか?撤去済みの軌道を含めると数十箇所は確認されている。名古屋の製材所トロッコのように同一業種で密集しているのと違い、軌道を所有する業種は多種多様にわたり、地域も県内全域に広がる。ただ共通するのは旧街道に沿った古い町並みの中に存在する(した)という事だ。さて、前置きはこれくらいにして本題に入る。
 この軌道を初めて知ったのは鉄道誌でもなく、WEB上でもなく、一般の旅行誌であった。旅の手帳1989年8月号がそれである。秩父の古い町並みを紹介する記事の中に軌道と施設所有者の写真が掲載されていた。当時の記事によれば、この明治から続く古い商家は元々は炭なども扱う米店で、軌道は店先から奥の蔵まで続いていて精米した米や炭の運搬に利用され、商売をやめた後も軌道だけが残っている状態であった。
 次に紹介されたのは同じく旅行誌の『旅』の846号だった。こちらは川越などの街角軌道を特集した記事で、この軌道の写真はなく、簡単な紹介だけになっているが、敷設のきっかけは昔、東京深川の炭屋で偶然見かけたトロッコが便利そうだった事が記されている。
 今度は最近になって、WEB上で秩父市本町の「骨董屋」だか「せんべい屋」だかにトロッコがあるという話題を目にした。台車の写真も掲載されている!状況からみて元米屋のトロッコの復活の可能性が高いぞ!
 と、言うわけで、この軌道の存在を知ってから20年以上たって、ようやく訪問したのであった。(腰、重すぎ!)
 しかし、今回は家族で日帰り旅行の途中だった。調布ICから、渋滞の中央道、空いてる圏央道を通って関越へ出て花園ICを経て長瀞へ寄った。ライン下りを楽しみSLを見て秩父市内へ。所々渋滞に巻き込まれ時間の割りに内容が薄い。秩父の道の駅で休憩し夕方になり、暗くなる前に急いで向かった。場所はやはり古い町並みの残る旧街道沿いだった。車の窓越しに古い建物の中の軌道とトロッコがあるのが見えた。店には駐車スペースが無かったので店の前を通過して近くの大型電気店にお邪魔して家族を残し徒歩で訪問した。トロッコは木製の平台車で商品の煎餅のディスプレイ用に使用されていた。土産用に煎餅を購入して写真撮影をお願いした。夕暮れが迫る中、手短に写真を撮り、合間に軌間計測した。メジャー不携帯だったので正確な軌間が測定できないが600mmに若干足らないように思った。本来なら廃線の部類に属するかも知れないが、レールに乗った台車がディスプレイ用として利用されて稼動できる状態になっているため、一応、休止中と判断した。
 帰りに近くの温泉に入浴し、正丸峠から帰路についた。昔、秩父のトロッコ巡りしたのを思い出した。これはまた別の機会に…。

《データ》
■旭屋 [現存]

◇埼玉県秩父市本町4-2◇秩父 歩10
◇区間:店舗〜蔵◇距離:約0.02km◇軌間:590mm(推定)◇動力:人力◇敷設日:不明
◇01:旭屋 FC(木製平台車/590mm)
◇参考:旅の手帳1989.08号p26-27・旅846p137-139
 

[調査日:2009.10.11]


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