■僅かな残存区間を探れ!


 油断禁物…。私にとってこの軌道の印象である。初めて鉄道誌に紹介されてから訪問する機会を逸したまま、気が付けばこうなってしまった。非常に悔やまれるのである…。
 今まで館林は何度か通過したのだが下車するのは今回が初めてであった。東武電車を降りて改札口に向かうホームの途中で正田醤油の工場などが見えたこの時点で呆然とすることになる。壊滅的な軌道跡の現状が把握できてしまったからだ。以前あった貨物ホームから工場前の敷地には工事車両が入っていて倉庫や軌道跡は残っていない。当然、軌道廃止後、貨物ホーム上に積み重ねられていた正田醤油のトロッコの姿もない。このまま改札を出ずに引き返そうかと思ったくらいだが、折角来たのだから…と、重い足を引きずるように工場の方へ向かった。
 小さな西口改札を出て階段を降りると、すぐ目の前が正田醤油の工場だ。綺麗に建て直された本社工場前の公道上に軌道が残存していたが新しく出来た塀の所で寸断され敷地内には軌道の形跡が全くない。一方、貨物ホームへ延びていた軌道は公道から外れた所で一旦途切れ、少し先の敷地内で復活するも10mくらいで再び消滅する。その先は工事用車両が通る為に鉄板が敷かれていたりアスファルトで舗装されたりと痕跡を辿るには絶望的な状況だった。
 その後、工場の周囲をひと回りしてみたが軌道の痕跡は見つからなかった。工場全体が綺麗に改修されトロッコが走っていた事など想像できないくらいだ。だが、未確認ではあるが改修された工場の一角に軌道跡が保存されたとの情報もある。貨物ホームへ通じていた軌道跡はいつ撤去されてもおかしくない状況だけに、工場内の軌道保存が本当だとすればせめてもの救いではある。

《データ》
■正田醤油軌道跡 [廃線]

◇群馬県館林市本町4◇館林(西口) 歩すぐ◇公道上なので終日可
◇残存区間:本社工場前◇距離:約0.02km◇軌間:508mm◇動力:内燃(フォークリフト)◇敷設日:不明◇廃止日:不明
◇参考資料:RM274p120-121(1975.07.17・2006.03.17)
 

[調査日:2009.07.03]




inserted by FC2 system