■葛生の保存列車を探れ!

 かつてトロッコ界で魔境の街と呼ばれた葛生も関係者以外で見られるトロッコは無くなってしまったが、その葛生の街でかつて活躍していた車輌は少しだけ残されている。
 住友セメント栃木工場の原石運搬軌道はトロッコ界の中でも比較的大規模で、鉄道書などでも多く取り上げられたことから有名であった。当時、あまりにも列車本数が多く軌道の将来は安泰と思われていたのだが、運搬する鉱石の多さにベルトコンベアー化されてしまった事は衝撃的な事件であった。軌道が廃止されたのは1980年のことだった。
 廃止後、機関車の何両かは県内の業者などに引き取られたが、どれも保存状態は悪かったようである。その中で一番大切に扱われたのは葛生図書館の駐車場に保存展示されている車輛たちだ。
 廃止直後は鉱山近くの会沢小学校の片隅に保存されていたが、小学校の統廃合で2004年に廃校となり、現在の地に移転された。
 会沢小学校時代は保存場所の周囲が狭く、撮影角度が限られていたが現在の地は低いフェンスはあるものの撮影はしやすくなったと思う。
 展示の機関車は日立製の10トン機。762mm軌間の機関車では大型だ。反面、後ろに従えている2軸の鋼製鉱車と人車はトロッコ的で面白い。特に人車は現役時代からマスコット的存在で人気があったようだ。現在、この人車は扉が開かれていて内部に入ることができるようになっている。保存車輛は全体的に状態も良く、手入れもしっかりとされているようだ。末永く葛生の街で余生を送って欲しい…、と願うのである。


《データ》
■葛生図書館前(旧葛生町役場)駐車場 [保存]

◇栃木県佐野市葛生東1-11-15◇葛生 歩10
 

《車輛データ》
◇01:住友セメント栃木工場 13号 DL(日立 1962年/B型 10t 762mm)
◇02:住友セメント栃木工場 FC(鉱車/2軸 762mm)
◇03:住友セメント栃木工場 FC(人車/2軸 762mm)

[探索日:2016.08.29]




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