■伊達のミニSL列車を探れ!

 今更説明するまでもないであろう。「やながわ希望の森公園」は実用の軽便蒸気が走る施設のひとつだ。遊戯施設の一部ではあるが敷設が園内などを回るエンドレスではなく、最寄駅と公園入口を結ぶ輸送機関の形態を取っている点が実用性を高めている。車輛も遊戯施設にありがちな派手さはなく落ち着いた感じもいい。
 阿武隈急行のやながわ希望の森公園駅を降りて駅前から線路を超えると正面に乗り場が見えて来る。徒歩で数分の距離だ。ここがSL列車の西口駅で東口駅までの0.8kmを約6分で結んでいる。乗り場の手前まで行くと遠くから汽笛が聞こえた。軌道はカーブしていて姿は見えないがこちらに接近して来る感じだった。急いでカメラを構えると蒸気機関車が姿を見せた。同時に並行する道路から車が数台。どうやら子供たちを列車に乗せて親は車で並走して来たらしい。助手席ではビデオカメラを構えたりしている。
 西口駅に着くと10人くらいの客が降りて来た。時計は11時半。駅の改札口にある時刻表を確認すると西口発11時40分で帰路は東口発12時丁度。その後は昼休みを挟んで13時20分発だった。帰りは12時17分の電車に乗りたい。迷わず11時40分の便で往復することに決めた。
 西口駅に到着した列車はすぐに機関車を客車から切り離し、軌道末端にあるターンテーブルで方向転換、機回し線を通って反対側に連結される。ターンテーブルは機関士がキャブから直接ボタン操作すると起動し機関車がターンテーブルから降りると自動的に元の位置に戻る仕組みになっていた。列車の運行は機関士と車掌の二人で行っている。機関車の切り離し、連結は車掌の誘導で行われ、機回ししている間は車掌は切符売りをしていた。往復乗車券を買ってホームに入った。オープンデッキの客車3両の編成だ。他の乗客が一番前に陣取ったので、一番後ろの車輛に乗り込む。車内は貸し切り状態だ。1人用と2人用の向かい合わせのシートが並ぶ。走行中はデッキには出られない。窓は透明のプラ製の板が付いている部分と何もない部分があった。雨天時もこのまま運行されているのだろうか?この日は好天だったので窓のない席を選んだ。
 出発準備も整い発車時刻となった。意外と汽笛一声はなく動き出す。普通の鉄道同様、キッチリ定時運行だ。路線は地形に合わせて左右にカーブして直線部分が少なく短いながら変化があって面白い。
 東口駅でも同様に機回し作業が行われる。再び列車に連結された機関車を先頭に折り返す。帰路も先頭車に家族連れが乗ったので最後尾に乗った。蒸気機関車特有の香りを漂わせながらゆっくりと走るが、あっという間の汽車旅だった。SL列車は車庫のある西口駅で昼休みに入った。
 SL列車の運行は土曜日と休日のみで午前2往復、午後3往復の一日5往復。料金は片道300円、往復だと割引があって500円だ。11月中旬から4月上旬は運休となる。
 車輛は全て地元福島県の協三工業製で6.3tのB型タンクの蒸気機関車の他、24人乗りボギー客車が3両。所有は地元自治体の伊達市で、車輛には銘板の他に伊達市備品の記載があるのも面白い。
 本格軽便蒸気が走るやながわ希望の森公園はマニア必乗のミニ鉄道である。


《データ》
■やながわ希望の森公園 [現存] HP

◇福島県伊達市梁川町字内山1-1(管理事務所)◇やながわ希望の森公園 歩5(西口駅)
 
◇運行:11:40-15:00・4月上旬〜11月中旬の土曜日、休日運行・5往復◇料金:\300(片道),\500(往復)◇所要:6分
◇区間:やながわ希望の森公園西口〜やながわ希望の森公園東口◇距離:0.8km◇動力:蒸気◇軌間:762mm
◇1987.04.18開業

《車輛データ》
◆01:やながわ希望の森公園 B62-418 さくら1号 SL(協三工業 1987年/B型タンク 6.3t 762mm)
◆02:やながわ希望の森公園 PC(協三工業/鋼製ボギー 24人乗 オープン客車 762mm)
◆03:やながわ希望の森公園 PC(協三工業/鋼製ボギー 24人乗 オープン客車 762mm)
◆04:やながわ希望の森公園 PC(協三工業/鋼製ボギー 24人乗 オープン客車 762mm)

[探索日:2014.08.31]

◇参考:RM43・RM44・全国保存鉄道U・TP631・全国保存鉄道V・知られざる鉄道U・全国フシギ乗り物ツアーp61-65・にっぽんローカル鉄道の旅p120-122・究極の現役ナローゲージ鉄道p100-101・知られざる鉄道決定版p35,p37・時刻表に載っていない鉄道に乗りにいくp4,p30-34


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