■コンクリート工場の小軌道を探れ!


 常磐線四ツ倉駅といえば、かつての住友セメント専用鉄道を思い浮かべる。奥の八茎鉱山から産出される鉱石を運ぶ目的で敷設された専用軌道であった。元は軌間610mmの馬車鉄道だったようで、のちに1067mmに改軌された。同じ住友系の葛生や八戸のようなナロー軌道風だったが、軽便色が濃く残っていて葛生よりも軽便らかったかも知れない。当時、確か「玉山鉄道」と呼ばれていた、その専用鉄道を廃止になる前に訪れたことがある。四ツ倉駅から線路に沿って玉山に向けて畑の中をトボトボ歩いてはみたものの、炎天下の中、途中で歩くのが嫌になって、中間地点の列車交換所あたりで列車を撮影して駅まで戻ってしまった思い出がある。今となっては専用鉄道も無くなり、専用鉄道の起点だった駅裏のセメント工場も無くなってしまったが、その工場の敷地の半分にコンクリート工場がまだ稼動している。そしてその工場の中に専用鉄道とは別の小さい軌道があると聞いて出かけてみた。
 四ツ倉駅から常磐線に沿っていわき駅方向へ歩いて最初の踏切を渡ったすぐの所に工場があった。その建物の裏手から軌道が細々と延びているのがすぐに見えたが、軌道自体は既に使われていないようだ。
 ほとんど塀がないので公道か私道かよく分からない道からしっかり観察できる。軌道上には車輌らしからぬ風貌のトロッコが2両あった。2軸の台枠の上に四角いホッパーのような物が載っている。(写真右が車輌)
 事前の調査によれば生コンを入れてセメント製品を作る型枠の所まで行き、枠に流し込む為のトロッコらしい。動力は巻索とのことであったが、それらしき設備は見当たらなかった。
 線路は工場の建物の中にある、生コンをトロッコに落とし込むホッパーのような所を起点に、すぐに外に出て途中で二本に分岐して共に左にカーブしてすぐに終点。全長で約30mといったところだ。もちろん専用鉄道と比較すればチッポケな軌道ではあるが、たまにはこんなチョット変り種の軌道を見るのも楽しい。

《データ》
■SMCコンクリート工業四倉工場 [廃線]

◇福島県いわき市四ツ倉町上仁井田字千歳52◇四ツ倉 歩5
◇残存区間:工場内◇距離:約0.03km◇軌間:不明◇動力:巻索◇敷設日:不明◇廃止日:不明


 

[調査日:2009.08.02]


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