■矢吹町の老舗酒蔵を探れ!


 東北線矢吹駅のホームに降り立つと目の前に大きな蔵が見える。その白い壁には「創業慶應元年」「大木代吉本店」の文字が書かれている。慶應元年と言えば西暦1865年、来年で150年になる老舗である。この酒蔵内にトロッコの跡が残っているという情報は少し前に得ていたが、震災の影響を大きく受けた事でお遊び気分のトロ探索では申し訳ないと感じ躊躇いがあった。以前、蔵の前まで行ってはみたが、忙しそうに動き回っている人達を見て出直す事にした経緯があった。今年で震災から3年。もう一度確認してみようと思い今回出掛けてみたのだった。
 生憎、本日は旧街道沿いの小売店は定休日。一応、店の前まで行ってはみたが、やはり閉まっていた。しかし店の扉を良く見ると「お急ぎの方は裏の工場へ…」とある。酒を分けて貰えるかも知れない…、そう思い裏の作業場前で出荷準備をしてワゴン車の運転席に乗っていたお兄さんに声を掛けてみた。すると2階の事務所に案内された。普段あまり日本酒は呑まない方だが、時々買うのは「純米、吟醸」の四号瓶か五号瓶と決めている。そこそこ旨くて値段も手頃なのが理由である。(今日は酒だけ買って後日また来よう…)で、薦めて頂いた「自然郷生酒」を購入すると、忙しそうに仕事をしていた若旦那か旦那さんか?が手を休めて蔵を案内して下さる事になった。(恐縮です…)
 事務所の階段を降りて下の作業場。卸用の酒が積まれている。次に線路側の大きな蔵。駅から見える蔵だが中を見させて頂く。震災で柱が傾き中は空っぽで修復作業中。続いて道路の向こう側の蔵へ。酒の香りが強くなった。震災前は大きな蔵が3棟あったそうだが2棟に。しかし漆喰の白壁など綺麗に修復されている。ボランティアさん達の手によって修復されたそうである。ひとつひとつ丁寧に説明しながら案内して頂いた。そして最後に蔵の角を曲がり旧街道沿いの小売店の裏に近付いたその時…、足元にトロッコの線路跡が現れた!元は蔵から旧街道まで延びていたとのこと。残存しているのは僅か5メートルくらいだが貴重な痕跡である。
 上の写真は旧街道側から蔵の方を写したもの。復旧作業は向こう側からこちらへ進められている。今後は小売店側の木造建造物へ。夏頃には作業が終わる予定だそうである。するとこの線路跡はどうなるのか?少しだけでもトロッコがあった証が残るといいなと思いながら見学を終えた。
 最後に「是非夏にまた来て下さい」、そう言われて再訪を心に決めて蔵を後にした。


《データ》
■大木代吉本店 [廃線]

◇福島県西白河郡矢吹町本町9◇矢吹 歩すぐ
◇残存区間:店舗裏◇残存距離:約0.005km◇敷設日:不明◇廃止日:不明
 

[探索日:2014.03.11]



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