■由緒正しき牧舎を探れ!


 青空の広がった鏡石駅のホームに降り立った。跨線橋の階段を上り、駅の裏側に降りるとポプラ並木に沿って歩き始めた。あまり時間がないのでやや早歩きになる。目的地まで約1.5kmの道のりを取材時間込みで1時間で片付けなければならない。夏の日差しの中に秋の風が吹き抜ける。少し汗ばむ体に冷たい風が当たり体温を下げ、時々寒さを感じる不思議な陽気だ。
 のどかな景色の中、やがて岩瀬牧場のサイロが見えてきた。入口の入場券売場まで行くと「本日無料開放」と書いてあった。通常\500の入場料がタダになった。中に入るとすぐに旧牧舎を探す。ステージ広場のような空間の裏手に木造の平屋が見える。近づくと2棟ある木造家屋の間に細いレールを発見した。軌道は双方の建物の中に延びている。一方の小さい建物には「立入禁止」の注意書きがあり、扉の隙間から覗いてみると、関係者の休憩室兼物置のようであった。もう一方の大きい建物には特に注意書きはないが扉は閉まっていて中には入れない。こちらが旧牧舎のようだ。建物の反対側に回ってみると軌道はなくなっているが、扉は開いていた。中は物置になっていて色々な物が置いてあるが建物の中央を縦断するように一直線に軌道が敷かれていて扉の手前で途切れていた。距離にして約50mくらいか。辺りを見回してみたがトロッコらしきものは無かった。
 ここ岩瀬牧場は現在は観光牧場として開放されているが、元は1876年に旧宮内省の御料牧場として開業した由緒ある牧場らしい。軌道についての詳細は分からないが、以前は鏡石駅まで軌道が敷かれていたという。小岩井のように馬車鉄道でも通っていたのであろうか?現存する軌道の軌間は508mmなので人力だったのかも知れない。言われてみれば歩いて来た道は途中、何となくカーブしていて廃線跡の雰囲気もあった。駅の黒磯寄りのところには農業倉庫らしき建物もあったので、もしかしたら、その辺りまで軌道があったのかも知れないが、現存しているのは旧牧舎付近のみであった。旧牧舎の駅側の方には痕跡は見出せなかった。
 素早く写真を撮り、辺りをキョロキョロしながら軌道を探って観光もしないで足早に去って行く。澄み渡った青空とは裏腹に、毎度の事ながら実に怪しい行動パターンなのである。

《データ》
■岩瀬牧場 0248-62-6789 [廃線] http://www.iwasefarm.com/

◇福島県岩瀬郡鏡石町桜町225◇鏡石 歩30◇9:00-16:30・無休◇\500◇P
◇残存区間:旧牧舎内◇残存距離:0.05km◇軌間:508mm◇敷設:不明◇廃止:不明


 

[調査日:2009.09.10]



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