■真夏の酒蔵を探れ!

 JR高畠駅は駅舎に温泉施設があることなどで知られているが、以前は糠ノ目という名称の駅であった。1974年までは糠ノ目から元々の高畠の中心地である旧高畠駅を経て二井宿まで山形交通高畠線が延びていて、今ではその線路跡の大部分がサイクリングロードとして整備され往時の面影を偲びながらサイクリングが出来るようになっている。
 現在の高畠駅の東方約9km、かつての山形交通高畠線の終点にほど近いところに米鶴酒造という酒蔵がある。創業は1697年とのことなので実に300年以上続く古い酒蔵だ。この古い酒蔵にトロッコの線路があると聞いたので出かけてみた。アプローチはもちろん線路跡のサイクリングロードだ。線路跡は若干迂回するので少々距離は長くなるが交差点以外は車の心配もなく安全だ。今回は自分の折りたたみチャリを持参したが、幸いにも高畠駅構内にある温泉施設「太陽館」にはレンタサイクルが用意されているので便利である。
 高畠駅の東側から北へ向かってサイクリングロードが延びていた。完全舗装の快適な道だ。右にカーブしながら徐々に進路を東へ向けていく。途中、ホームの跡が残っていたりして線路跡であることを実感する。約5kmで旧高畠駅に着く。ここには駅舎だった建物と山形交通の電気機関車、電車、貨車が保存されていた。サイクリングロードはまだ続くが、高畠の古い町並みが見たくて街中へ入った。ほんの僅かに登りだが、ほぼ平坦と言っていいくらいの道を行く。集落を出て暫く進むと右手に米鶴酒造の看板が見えてきた。ここまで約50分の道程であった。おそらく気温は35℃前後の炎天下でのサイクリングだったので着いた途端に汗が噴き出した。事務所の向こう側に「酒蔵見学受付」と出ていたのでチャリで向かったら、事務所から女性が出てきて試飲場を兼ねた売店に案内された。(そのすぐ横にお目当てのトロッコの線路がありましたが、エアコンの効いた売店には勝てませんでした…。)タオルで汗を拭っていると「酒蔵見学ですか?」と尋ねられたので、ホントは酒造りにはあまり興味が無かったのであるが、暑さで思考回路が鈍っていたようで、つい「ハイ」と答えてしまった。しかし酒蔵案内の担当者の所在が判らないらしく、後から現れたもうひとりの女性事務員に「今日の担当は○○君よね?」と確認し呼び出し放送までかけられてしまった。今更、トロッコだけで…などとも言えず、担当者が現れるまでキンキンに冷えた甘酒を試飲していた。(日本酒も勧められたのだがアルコールが回るとぶっ倒れそうだったのでやめました。)で、この甘酒が旨いこと旨いこと!(生まれて初めて甘酒が旨いと感じましたわ!)
 ようやく担当者が現れ見学開始となった。まずは緩くS字を描いたトロッコの線路上を歩いて奥の古い木造の建物へ向かった。レールはコンクリートで埋まっている部分もあり、廃線の状態である。線路は建物の中まで延びているようにも見える。線路と建物がぶつかる所に仕込水が出ていた。口に含むと全くクセのない水であった。
 古い建物の扉を開けて中に入ると洗米場と仕込場だった。トロッコは洗米場へ米を運ぶのが目的だったようだ。線路のあるあたりは暗くて良く見えなかったが、レールらしきものは見えなかった。撤去されたか?地面のコンクリートの下か?その後はトロッコから離れて酒造りの工程の説明を受けたがここでは割愛しておく。最初の売店に戻って見学は終了。所要時間は約20分であった。見学ルートの中では車両の類は見つからなかった。
 結局、試飲した甘酒を購入し自宅へ送った。見学のお礼を言って、トロッコの写真撮影の許可を貰う。ようやく汗が引いてきたが再び表へ出た。
 落ち着いてゆっくり軌道を眺めるといい感じの曲線であった。奥に見える仕込場やレンガ煙突も実にいい。青い空と木々の緑・・・。たとえ廃線であっても雰囲気がいいと気分も良くなる。一通りカメラに収めて軌間を計測すると555mmという珍しい値が出た。軌道の距離は30mくらいか?
 米鶴酒造を後にしてペダルを踏んだ。10分もすると…、あっちい〜〜〜!!汗がダラダラですわ〜。

《データ》
■米鶴酒造 [廃線] HP

◇山形県東置賜郡高畠町二井宿1076◇高畠 車20◇酒蔵見学10:00-16:00・無休(4-10月)・11-3月の酒蔵見学は要予約、要連絡
◇残存区間:事務所横〜洗米場入口◇残存距離:約0.03km◇軌間:555mm(実測値)◇動力:人力(推定)◇敷設日:不明◇廃止日:不明
 

[調査日:2010.08.30]




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