■森のボールドウィンを探れ!

 ボールドウィンと言えば木曽の赤沢が有名である。そして最近では群馬の沼田のも注目されるようになって来た。が、この秋田に保存されているのも忘れてはならない。この機関車に会うために1983年9月の東北旅行の際に強引なスケジュールを組んだ。当時、確か土曜日と休日のみ秋田駅からバスが運行されていた(現在は廃止)と思うが、行ったのは平日。同じ方向へ行く別路線のバスに乗って途中の「仁別何とか」(何じゃそりゃ!)というバス停で降りて山の中の舗装道路を歩いた。怪しくなってきた雲行きを気にしながら、小走りで1時間以上坂道を登った。そして、ようやく辿り着いた仁別国民の森にボールドウィンの姿が見えたのだった。
 初めて実際に見るボールドウィンは想像していたよりも小さく感じたが、その独特な風貌はやはりインパクトが強かった。若干、和風に改造されてはいるものの、アメリカンスタイルはしっかり残っている。
 ボイラーの横に簡単な説明板がぶらさがっていた。それによると…、

「この蒸気機関車は大正10年(1921)に米国フィラデルフィアの
ボールドウィン社で製作された北海道置戸営林署の森林鉄
道で木材運搬に活躍していたが昭和42年仁別森林博物館
の開設にともないこれを譲り受け展示したものである。
森林鉄道による木材運搬は昭和40年代前半でトラック輸送に切
り替えられたが、蒸気機関車は明治末期より昭和20年代前半までは
木材輸送の花形的存在であった。
けん引重量35トン、けん引貨車10台、積載量1台約5.5㎥(1列車約55㎥)」(原文通り)

 この機関車は1921年製、製造番号54419番、同型機である沼田の3号機は同年の54511番。こちらの方が兄貴だ。因みに赤沢は1915年の41997番である。
 これ以外にも酒井のDLや運材台車などが展示されていた。(下記参照)展示は全て屋外。(現在は一部屋内へ移動)数十分で一通りの写真を撮り終えすぐに帰路についた。
 帰りのバスの時間を気にしながら、来た道をバス停に向かって下り始めると、とうとう雨が降り出した。一気に雨脚が強まる。傘を持たずに来たのですぐに服がずぶ濡れになった。すると後ろから来たライトバンが停まり、幸いにも麓のバス停まで乗せてくれることになった。徒歩で1時間以上かかった道のりを車で10分足らずで下った。お礼を言ってバス停で降りた。雨が小雨になった。時間が余ったのでバス停周辺を散策していると、レールで出来たガードレールがあった。かつてこのあたりに森林鉄道が走っていた証だと思うが、どこに軌道跡あるのかは良く判らなかった。バスに乗って秋田市街に入る。行きの苦労に比べると帰りはあっけなく現実に戻る。ついさっき見たボールドウィンが夢の中の乗り物のように思えてきた。

《データ》
■仁別森林博物館 018-827-2322 [保存]

◇秋田県秋田市仁別字務沢国有林◇秋田 バス40(仁別)→歩(約10km)
◇開館 10:00-17:00・10:00-16:00(10-11月)火曜日,水曜日,木曜日休館・11-4月閉鎖◇入館無料
 
《保存車輌データ》
◇01:置戸営林署 2号 SL(ボールドウィン 1921年 54419番/B1タンク型 762mm)
◇02:能代営林署 仁鮒森林鉄道 D-29 DL(酒井 1955年6月 F-5型/BB型 8t 762mm)
◇03:仁別森林鉄道 FC(鋼製運材台車 762mm)
◇04:仁別森林鉄道 FC(鋼製運材台車 762mm)
◇05:仁別森林鉄道 FC(木製運材台車 762mm)
◇06:仁別森林鉄道 FC(木製運材台車 762mm)
◇07:仁別森林鉄道合川営林 FC(砕石運搬車 762mm)
◇08:仁別森林鉄道 FC(協三工業/自走式集材用ウインチ車 762mm)

参考文献:TF322・RF485・RF555・RF666など

[調査日:1983.09.05]




inserted by FC2 system