■豪商の旧お店を探れ


 蔵の街江刺にトロッコ軌道を有する酒蔵があるという情報を元に調査をしていると、古くから商いをしてきた依田養(よだよう)商店の旧本店にトロッコ軌道が残されているらしい事が判明し探索してみた。事前の調べでは、現在は別の場所で商いを続けているようで、ここの旧本店の古い商家造りの建物と蔵の建物は個人宅として現存しているらしい。では早速現地へ!
 蔵が点在する川原町地区にある無料の駐車場に車を停めると、すぐ隣が目的の依田養商店であった。実際、探索が可能かどうか?また、軌道が現存しているのか、いないのか?こればかりは実際に現地へ行ってみないと分からない場合が多いが、店の前まで来て、まずは店と蔵の間にある通路の僅かに開いたシャッター下からレールを確認できた。(シャッターが完全に降りていたら見えない)商店の雨戸も閉ざされておらず通りに面した間口全体のガラス戸が綺麗であった。(これは好感触!)
 まずは店の扉を開けて声をかけてみる。すると店の奥から女性が出て来た。来意を告げてトロッコの調査をお願いすると、裏の建物に奥さんが居るのでそちらに声をかけて欲しいというので店の横の扉から軌道のある通路へ案内された。(おおお〜〜軌道敷の上を歩ける〜〜)軌道上を奥に向かって数歩進むと、さっきの女性から再び声をかけられた。女将さんが外出から戻られたという。どうやら女将さんは買い物へ出ていたらしく、私が訪問した時に丁度帰宅して来たのだった。女将さんはお歳を召されているように見えたが軽自動車を自分で運転してのご帰宅だった。店の前に車を停めてシャッターを上まで開けて入って来た。改めて来意を告げると、滅多にお見せしないけど手前の方だけなら…、と言ってOKして下さった。早速、写真撮影を開始し軌間を計測。軌道延長を確かめようと奥を覗き込むと、軌道は緩く「く」の字型に曲がっている。奥深く続いていて軌道末端は見えないが途中、綺麗に手入れされた中庭がちらっと見える。奥の蔵の手前の軌道上には台車が見えるが、許可を頂いたのは手前だけなので近づけなかった。しかし、一旦奥の部屋に入った女将さんが再び出て来て奥の蔵の方へ歩いて行ったと思ったら台車をゴロゴロと押して来て下さった。台車の動きは悪くなさそうであった。既に商いはやめているので使用する機会はほとんどないと思われるが、今でも軌道の上に動く台車があるというのは喜ばしい限りだ。これを理由に区分けを「廃線」ではなく「現存」(休止中)とした。
 依田養商店は現在、ガソリンスタンドや肥料店などを営んでいるが、元々は明治期からセメント、塩、油などを扱ったこの地の豪商で、沢山の従業員が働いていたそうである。
 尚、軌道のある旧本店は原則非公開の個人宅ですので無理な探索はせずに常識的な範囲でお願いいたします。

《データ》
■依田養商店本店 [現存]

◇岩手県奥州市江刺区川原町3-7◇非公開
◇区間:店舗横〜蔵◇距離:0.04km(推定)◇軌間:470mm(実測)◇動力:人力◇敷設日不明◇休止日不明
 
《車輌データ》
◆01:依田養商店 FC(木製2軸平台車 470mm)

[探索日:2013.03.28]




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