■老舗蔵元の軌道跡を探れ

 奥州街道(国道7号線)から市街地への道を進むと小さな商店に混じって温泉旅館や公衆浴場などが点在し、ここが温泉街である事を実感する。その中、一際目立つ建物の壁面には○に漢数字の七で構成された屋号「マルシチ」と会社名の「津軽味噌醤油」の文字が書かれている。温泉の街、大鰐に創業100年を誇る古い蔵元の工場だ。古くから身近にある温泉を利用して味噌や醤油を醸造しているという。この老舗蔵元の工場にトロッコの線路跡が残っていると知り訪ねてみた。
 工場と道を挟んだ場所に駐車場を見つけチョット失礼して、雨の中、傘をさして探索を開始した。まずは工場の角にある事務所を覗いてみたが女性の事務員さんがせっせと仕事しているだけでトロッコの話をしても通じる感じがしない。そこで別の突破口を探ってみると、製品や原料の出し入れ口の所に詰所の様な扉を発見。長年の勘でここをノックしてみると、中から工場で作業している格好の男性が出て来た。中は休憩室の様で、どうやら休憩中にお邪魔してしまったようだ。とりあえずダメ元でトロッコの線路跡の事を切り出してみる。すると少し間があったがOKして下さった。そして頭髪落下防止のキャップを渡され、それを被りその男性の後について奥へ入った。(とは言え、この方の正体は?)
 休憩室の奥にスペースがあって、そこを過ぎると通路があった。そして足元には溝を埋めた2本の筋が…。軌道跡発見である!溝を辿るとレールの頭が見える所もあった。ずいぶん前から使われていない事は良く判る。軌道跡はざっと見て30メートルくらいか…。全線屋内。通り易いように溝は全て埋められているが軌道跡は明確に残っていた。
 休憩中では申し訳ないので素早く撮影を済ませ一緒に休憩室へ戻った。キャップを脱いで帰り支度をしていると男性から名刺を頂いた。すると…、名刺には「工場長」の肩書きが…。(スミマセン、そんな偉い方とは知らず…)こんな見ず知らずの怪しい人物を中に入れて頂き有難う御座いました。

《データ》
■マルシチ津軽味噌醤油梶@[廃線] HP

◇青森県南津軽郡大鰐町大鰐字湯野川原56◇大鰐温泉 歩10
◇残存区間:工場内(完全屋内)◇残存距離:約0.03km◇敷設日:不明◇廃止日:不明

 

[探索日:2012.11.06]




inserted by FC2 system