■校庭のプリムスを探れ

 全国にナローの保存車輌は沢山あるが、小学校で保存されている例はそう多くない。しかし、住友セメント八戸工場専用軌道の車輌はかつての沿線や鉱山近くで3つもの小学校に保存されている。いずれも機関車、鉱車3両、人車の組合せで、住友セメントから経営を引き継いだ住友金属より寄贈
されたものだ。トロッコが運行されていた軌道は1973年に廃止され、既に40年近く経過しているが、その車輌だけでも残されているのは素晴らしい事だ。雨上がりの昼前、その中の一校、松館小学校を探索した。
 脇道に入り緩い坂を登ると校門があり、そのすぐ中に駐車スペースがあった。ゆっくり車を乗り入れると校庭の一番奥にトロッコの編成が見える。空いている所に車を止め、まずは職員室へ。受付の小窓を開けると一番奥に教頭先生らしき方が…。来意を告げトロッコの写真撮影の許可を頂く。「校庭がぬかるんでいるので、校庭の端にある側溝の蓋の上を歩くといいですよ」と教えてくれた。その通りに側溝を伝って接近した。
 保存されている機関車はプリムス製の7t機であるが、以前は加藤の8t機があり荒廃により撤去。その代わりに陸奥工業桝館作業所からやってきたのがこのプリムスだ。
 プリムスの左側面には「120」の標記があった。しかし、これは実際の車番ではないようだ。松館小学校のホームページにトロッコに関する記述があり、そこには、「トロッコは120周年を記念して設置した」とあるので、その「120」と推測する。(それにしても120周年とは歴史のある小学校である)また、付属の鉱車にはそれぞれ「1」「2」「3」の標記があり、人車は無番である。
 車輌は校庭の外れ、屋根などない屋外に保存されているが状態は悪くない。恐らく定期的に手入れされているのであろう。落ち葉に囲まれた軌道にトロッコ列車は静かに停車中だった。車輌や案内板を見ただけでも石灰石採掘産業が如何にこの地に根付いたものなのか垣間見ることが出来た気がした。

《データ》
■松館小学校 [保存] HP

◇青森県八戸市大字松館字門前6-2
 
《車輌データ》
◇01:住友セメント八戸工場 鉱石運搬軌道 DL(プリムス/B型 7t 610mm)
◇02:住友セメント八戸工場 鉱石運搬軌道 FC(2軸人車/610mm)
◇03:住友セメント八戸工場 鉱石運搬軌道 175号 FC(木製2軸鉱車/610mm)
◇04:住友セメント八戸工場 鉱石運搬軌道 397号 FC(木製2軸鉱車/610mm)
◇05:住友セメント八戸工場 鉱石運搬軌道 FC(木製2軸鉱車/610mm)

[探索日:2012.11.07]




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