■偶然見つけた炭鉱軌道を探る

夕張新炭鉱


 先日、テレビで中国の炭鉱でのガス突出事故のニュースが流れていたのを見ていたら北炭夕張新炭鉱の悲惨な事故を思い出した。ご存知の方も多いと思うが、その事故とは、1981年10月16日に発生したガス突出事故と、その後、二次的に発生したガス爆発による坑内火災で最終的には93名もの多数の死者を出してしまった日本国内の鉱山事故史に残る大惨事だ。この事故は連日テレビのニュースで放映され、負傷者や死者が運び出される坑口、その後の火災により坑口から噴出す黒煙、火事を鎮火させる為の注水、坑内に取り残された従業員の家族たちの悲痛な叫び声や経営者に向けられた罵声など衝撃的、絶望的な映像は目を覆いたくなるほどであった。少しだけであったが、私自身もこの事故の前に夕張新炭鉱を訪れていただけに、当時は複雑な思いでニュースを見ていた。
 初めて北海道を訪れた1980年、限られた資金と時間で効率良く道内を巡る為、駅から徒歩圏内の専用鉄道やトロッコを中心にプランを立てた。参考にするのはいつものように地形図が中心である。夕張、赤平、芦別、釧路など地形図に載っていた鉱山軌道の印を頼りに足を向けた。少し古い地形図には鉱山軌道がまだ多く記載されている時代だった。
 当時、夕張線の沼ノ沢からは北炭真谷地の専用鉄道が延びていた。その専用鉄道を見ようと沼ノ沢駅裏手に回り、歩いていたら資材搬入用の裏門のような入口があって、その中にオレンジ色のバテロコと錆びた鉱車が見えたのである。夕張新炭鉱のトロッコは偶然の発見であった。鉱山というよりは資材置場か修理工場のような場所であった。短い時間で車両を中心に写真を撮影して後にした。滞在時間は15分程度だったように記憶している。
 この翌年、先述の事故が発生した。更にその翌年、この事故が原因で夕張新炭鉱は閉山することになる。出炭開始から僅か7年であった。こんな写真でも何かの参考になればと思いアップさせていただきました。

《データ》
■北炭夕張新炭鉱 [鉱山軌道]

◇北海道夕張市沼ノ沢◇沼ノ沢 歩すぐ
◇区間:鉱業所内◇距離:不明◇軌間:610mm◇動力:蓄電池◇出炭開始:1975.06◇閉山:1982.10
※軌間は610mmと記録してありましたが、508mmかも知れません。
 
◇参考資料:地形図1/50000『紅葉山』昭和53年8月30日発行(大正8年測量・昭和51年編集)

[調査日:1980.08.03]

夕張新炭鉱

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夕張新炭鉱 


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