■万字の温泉旅館を探れ!


 時代が昭和から平成に入って本格的に温泉巡りを始めた。この頃から世間でも温泉ブームが始まりテレビなどでも所謂「秘湯」と呼ばれる温泉が紹介されるようになったが、万字温泉のようなあまり特徴のない小さな温泉は取り上げられる事も少なかった。そう言う意味では本当の「秘湯」だったのかも知れない。そして元々トロッコ探索をしていた私にとってトロッコのある温泉は一石二鳥のターゲットだったのであった。
 万字温泉のトロッコが紹介されたのはレイルマガジン122号(1993-11号)であった。渡道する際は絶対に訪問しよう、そう決めていたが2000年になってようやくその機会が訪れた。
 この日は三笠の鉄道記念館と周辺の温泉、そして旧万字線に沿って万字温泉へ向かった。万字温泉は万字炭鉱があった場所の更に奥、万字の市街地から夕張方面へ通ずる道の途中にある。市街地を抜け山が深くなり峠へ向けて勾配がややきつくなり始めると右手に「万字温泉」の看板が現れた。早速車を乗入れる。道路よりも一段上に駐車場があるようだ。ゆっくり車を進めると駐車場の片隅にお目当ての鉱車があった。
 鉱車はかなり旧式の木製鉱車だ。側面の下部が開いて鉱石を落とす構造になっていて、連結器は原始的なピン式、台枠の端がそのままバンパーになっている。鉱車は全て同型で6両ある。軸箱に北炭のマークがあること、また、万字温泉がかつて万字炭鉱の従業員寮だったことなどから北炭万字炭山時代のものと推測された。製造は北炭の自社工場だろうか。万字炭鉱は1960年に北炭から分離しているので、それ以前の車輛という事だろうか。写真でもわかるように鉱車は看板代わりとして並べられていて、中には飾りの石炭も入っていた。
 何枚か写真に収めて温泉に入った。意外と入浴客は多い。温泉はあまり特徴のない硫黄系の冷鉱泉であるが、湯船にリンゴが入れられ、浴室にはいい香りが漂っていた。一応、「リンゴ風呂」がココの売りらしい。浴後、帰りにもう一度鉱車を眺めてみたが、看板代わりの展示品とは言えいい感じで並べられているように思えたのであった。

※2014年9月29日に再訪。温泉旅館は廃業、解体され鉱車は全て無くなっていた。

《データ》
■万字温泉旅館(奥万字王国) [保存]

◇北海道空知郡栗沢町万字字二見町1◇岩見沢 バ

《車輛データ》
◇01:万字炭鉱 FC(北炭 木製鉱車)
◇02:万字炭鉱 FC(北炭 木製鉱車)
◇03:万字炭鉱 FC(北炭 木製鉱車)
◇04:万字炭鉱 FC(北炭 木製鉱車)
◇05:万字炭鉱 FC(北炭 木製鉱車)
◇06:万字炭鉱 FC(北炭 木製鉱車)


[探索日:2000.10.22]


◇参考:RM122p72-73(1993.08.05)


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